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新聞掲載記事

更新:2005/12/29

あなたにもできるインターネット出願


日本でもついに始まったインターネット出願


 日本国特許庁では、10月1日よりインターネットを介した特許・実用新案登録・意匠・商標の出願手続、査定系審判手続など(以下、「特許出願等」と省略します。)を行う制度を開始しました。今回は、このインターネット出願についてまとめてみました。
 従来にも、ISDN回線を利用して、特許庁に電子的に書類を提出する電子出願制度を利用することができました(この制度は、現在も利用することができます)。しかし、ISDN回線では、電送速度が十分ではないために、大量の文書を電送する必要がある場合には、不都合が生じることもあったようです。

 また、コンピュータと通信に関する技術開発は、日進月歩であることから、現在の通信技術に応じて、インターネットを介して特許出願等を行う技術が求められていました。既に米国では、インターネットを利用して特許出願等を行うことができるようになっています。このような状況のもと、いよいよ日本でもインターネット出願が開始されました。

インターネット出願とは
 インターネット出願とは、ADSL、FTTH(光)、CATVなどのブロードバンド回線を利用し、電子証明書・電子署名などの技術を用いてオンラインで特許出願等を行うことを言います。
 インターネットを用いる場合には、安全性を確保することが重要となります。このため、実際に特許庁との間でインターネット出願を行えるようになるためには、いくつかの準備が必要となります。

インターネット出願を行うための準備
 インターネット出願を行うためには、いくつかの準備が必要となります。これらの準備事項について、次に説明します。
1.パソコンの準備
 インターネット出願を行うためのパソコン、OSなどについては、いくつかの制限があります。例えば、CPU(ペンティアムIII800MHz以上)、メモリ(最低でもOSが推奨するメモリ+256MB以上)、ハードディスク(40GB以上)、ディスプレイ(1024x768ピクセル以上)、OS(ウインドウズXPホームエディション/プロフェッショナルエディションSP1以降)などについての指定があります。現在では、パソコンも随分と安価になっているので、これらの制限をクリアするには、それほどの費用をかけなくても良いと思われます。また、その他にも適当なハードウエアやソフトウエア(イメージスキャナ、作図ソフト、プリンタ、ワープロなど)があると便利です。

2.電子証明書の入手
 インターネット出願では、申請人を識別し、かつ提出書類が本人のものであることを検証するために「電子証明書」を利用します。電子証明書は、印鑑証明としての意義があります。この電子証明書には、実印としての「秘密鍵」と、押印に該当する「電子署名」が含まれています。
 申請人が法人の場合には、「法務省 電子認証登記所」で発行された「商業登記に基づく電子証明書」が必要です。詳細は、法務省HP(全てのURLについては後述)に掲載されています。商業登記用ソフトウエア(数社から発売中)、申請用FD、印鑑カード、登記印紙を用意して、法務局に申し込むことで、電子証明書が発行されます。
 申請人が個人の場合には、日本認証サービス株式会社、日本商工会議所、セコムトラストネット株式会社、または株式会社中電シーティーアイのいずれかで発行される電子証明書を取得することが必要です。上記いずれかの認証局に対して、申込時に必要なもの(利用申込書、住民票など)を郵送することにより、電子証明書と秘密鍵が送付されます。なお、認証局によって、申込時に必要なものが異なりますので、詳細は各HPを御参照ください。

3.特許庁への事前手続
(1)インターネット用ソフトウエアの入手
 ソフトウエアの入手は、インターネットから行います(従来のように、CD-ROMの郵送は行われません)。まず、特許庁運用サーバにアクセスし、「インターネット出願ソフト」をクリックした後、所定の情報(住所、氏名、電子メールアドレスなど)を入力して、ダウンロード請求を行います。
 請求後しばらくすると、電子メールで「ダウンロードURL通知メール」が届くので、このURLからインターネット出願ソフトをダウンロードします(図1)。

(2)ソフトウエアのインストール
 ダウンロードしたソフトウエアをダブルクリックすることにより、インストールが開始されます。インストールの操作は、一般的なソフトウエアのインストールと同様の操作で行うことができます。但し、出願用ファイルの管理等に応じて、適当にオプションを変更する必要が生じる場合があります。詳細については、特許庁HPのインターネット出願ソフトリリースのお知らせを参照してください。

(3)ソフトウエアの環境設定
 ソフトウエアのインストールが完了したら、「スタート」の「すべてのプログラム」中、「インターネット出願ソフト」の「環境設定」(図2)を選択し、ソフトウエアの環境設定を行います。環境設定には、フォルダ、通信、表示/印刷、起動/画面、入力、出力の6個のタブが用意されています。このうち、「通信」については、コンピュータと特許庁との通信状態を確保するために必須の設定です。通信について設定を行った後には、「接続テスト」を行うことができます。接続テストについては、電子証明書が不要のため、申請人利用登録の前でも行うことができます。


(4)ひな型のインストール
 出願等の書類は、HTML文書で作成します。インターネット出願ソフトで提出可能な書類については、HTML形式のひな型ファイルが用意されています。このファイルは、特許庁運用サーバからダウンロードすることができます。運用サーバへアクセスし、「インターネット出願ソフト」をクリックした後、インターネット出願ソフトの画面で、「マニュアル/ひな型ダウンロード」をクリックします。次の画面で、ひな型のアイコンをクリックして、ダウンロードします。
 ひな型をダウンロードしたら、インストーラをダブルクリックし、ひな型をインストールします。インストールの操作は、一般的なソフトウエアのインストールと同様の操作で行うことができます。
 インストールされたひな型のファイル内容は、市販のワープロソフトで変更することにより、実際の提出に使用することができます。

(5)申請人利用登録
 パソコンで申請人利用登録を行うことにより、識別番号に対応した電子証明書を使って、そのパソコンからインターネット出願ソフトを利用することができるようになります(図3)。

 識別番号は、特許庁への手続をする申請人に必要なものであり、申請人の住所、氏名、印鑑(或いは電子証明書)の情報を届け出た後に、特許庁から発行されるものです。既に識別番号を持っている方は、その番号を用いて申請人利用登録を行うことができます。また、識別番号を持っていない方は、インターネット出願ソフトの申請人利用登録時に、識別番号を取得することができます。
 申請人利用登録には、電子証明書と、証明書ストア用の媒体(電子証明書・秘密鍵・Pinの保存場所であり、MO・USBメモリなどの外部記憶媒体、またはハードディスクが利用できます)が必要となります。なお、電子証明書や秘密鍵については、安全な管理を徹底するために、証明書ストア用の媒体は、パソコンから取り外して保管できる外部記憶媒体が推奨されています。また、証明書ストアは、ネットワークで共用することは、セキュリティ上、非常に危険となるので、避けるのが賢明です。
 ここでは代表的に、識別番号を持っていない方の手続について説明します。まず、インターネット出願ソフトを起動します。画面左下の申請人利用登録をクリックします(図4)。

識別番号を持っていない方は、次の画面で「識別番号を新規取得」をクリックします(図5)。

 次に、電子証明書のインポートと、証明書ストアの作成を行います。項目(1)には、認証局から入手した証明書と秘密鍵格納ファイルを、項目(2)には、認証局からの通知を確認し証明書と秘密鍵格納ファイルにアクセスするためのパスワードを、項目(3)には、証明書ストアの作成先を、項目(4)には、Pin(パスワード)を、それぞれ入力します。入力情報を確認した後に、申請人の情報(個人法人種別選択)を登録します。
 全ての情報を入力したら、特許庁宛に申請人情報を送信します。

 申請人利用登録が完了したら、必要に応じて、サービスメニュー設定を行います。インターネット出願ソフトでは、出願等の手続の他に、オンライン発送利用、出願ソフトニュース配信、電子現金納付専用パスワード登録、電子現金納付者カナ氏名登録の設定を変更することができます。
 申請人利用登録とサービスメニュー設定が完了すると、本人認証画面の識別番号リストに識別番号が表示されるようになります。
 これで事前準備は完了です。次に、インターネット出願ソフトを利用して、実際に書類を出願する手続について簡単に説明します。

提出用書類の作成
 インターネット出願ソフトを用いて特許庁に送信する各種書類は、すべてHTML形式で作成します。図面や表などは、イメージデータとして書類中に組み込むことができます。
 例えば、特許出願用の書類を作成する方法について概説します。特許出願には、願書、特許請求の範囲、明細書、要約書、図面(必要な場合)が必要です。ひな型をダウンロードしている場合には、ひな型ファイルの中から適当なものを抽出して、ワープロで加工することができます。
 図6~図10には、各書類の記載例を掲載しました。図面には、別に保存したイメージデータを貼り付ける必要があります。インターネット出願ソフトを起動して、特許庁への提出操作を行う前には、この書類をHTML形式としておくことが必要です。






インターネット出願ソフトの操作
 インターネット出願ソフトを起動します。起動画面が立ち上がったら、識別番号とPin(パスワード)を入力することにより、ソフトの操作を開始します。ソフトには、出願、発送、請求、閲覧、保持、証明書などのタブメニューが用意されています。出願を行う場合には、出願タブを選択し、利用者1の送信ファイルを選択しておきます(図11)。


 ここで、文書入力を選択し、予め作成しておいたHTML文書を選択し、更に電子証明書情報を確認した後、実行ボタンを押します。
 すると、インターネット出願ソフトが、HTML文書を特許庁提出用の電子フォーマットに変換します。このとき、書式中に不備がある場合には、電子書類が作成されず、「入力チェック結果」にエラーファイルが作成されるので、そのエラー箇所を見直しながら、再度上記操作を行います。この操作を原則として、「正常に処理されました」と表示が出されるまで行います。
 処理が正常に完了すると、「送信ファイル」に提出用の電子書類が作成されるので、このファイルをクリックすることで、ファイル内容を確認することができます。

 ファイル内容が合っていれば、「オンライン出願」ボタンを押すことにより、その電子書類を特許庁に提出することができます。出願が完了した後には、「受理済」フォルダの中に、特許庁に受理された電子書類が保存されます。この書類をダブルクリックすることにより、内容を確認・印刷することができます。また、受領書フォルダには、提出日と提出された電子書類の題名などが記載された受領書が保存されています。この受領書は、ダブルクリックすることで、内容を確認することができます(図12)。

 以上でオンライン出願の基本操作の説明を終わります。

インターネット出願ソフトのその他の機能
 インターネット出願ソフトは、オンライン出願の他に、オンライン発送(特許庁からの通知などの書類をオンラインで受信する操作)、オンライン請求(特許庁への証明請求、閲覧請求などをオンラインで行う操作)、オンライン閲覧(特許庁に出願された書類や磁気原簿をオンラインで閲覧する操作)などの操作を行うことができます。

インターネット出願ソフトの特徴
 次に、インターネット出願ソフトに関する特徴を説明します。このソフトは、従来のISDN回線よりも速いブロードバンド回線を利用するため、迅速に大量のデータを送受信することができます。このため、従来のパソコン出願ソフトでは、時間がかかりすぎる、または電子出願することができなかった案件については、非常に有望です。例えば、一日に数十件程度も特許出願を行う必要がある場合、バイオテクノロジー関連の特許出願において数百頁以上の遺伝子配列表を提出する必要がある場合、或いは多数の写真スキャン図面を添付する必要がある場合などには、非常に有用です。
 但し、国際特許出願(PCT)については、適用されていないので注意が必要です。PCTを電子出願する場合については、以前のパソコン出願ソフト(ISDN回線)を利用しなければなりません。
 また、電子証明書は、従来の捺印と同等の意味を持っています。この証明書は、特許庁に対する出願等の手続に留まらず、広範囲な電子商取引の際にも有効です。このため、その管理には十分な注意が必要となります。

弁理士 小林 洋平


【関連URL】
特許庁関連URL
 特許庁 http://www.jpo.go.jp/indexj.htm
 特許庁運用サーバ
 http://www.pcinfo.jpo.go.jp/
 特許庁HPのインターネット出願ソフトリリースのお知らせ
  http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/e_shutugan/e_shutugan_list.htm
 インターネット出願ソフトマニュアルのダウンロード
http://www.pcinfo.jpo.go.jp/update/manual/pdf_manu.html#INET_00

電子証明書について
 法務省
 http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION
 日本認証サービス株式会社
 http://www.jcsinc.co.jp
 日本商工会議所
 http://ca.jcci.or.jp
 セコムトラストネット株式会社
 http://www.secomtrust.net/
 株式会社中電シーティーアイ
 http://www.cti.co.jp

 注意
 この記事内容は、特許庁インターネット出願マニュアルの内容からの抜粋、および記事作成者の意見から構成されています。なお、字数の制限上、予納照会等の手続については説明することができませんでした。更なる詳細については、自己責任で行って下さい。