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新聞掲載記事

更新:2007/03/14

弁理士にうまく依頼するための8つのポイント(特許事務所の扉を叩く前の予備知識)

■1.開発を始めたら、開発のコンサルタントとして弁理士に相談する
 弁理士の仕事は、出願の代理だけではありません。開発の成果物である企画書や開発記録。これらも知的財産です。たとえば、試作した金型が流出した場合にその金型に基づく模倣品の発生に対してどのような防衛策を講じるか等のアドバイスも弁理士の仕事です。
 また、開発者から見ると「発明」に至っていなくとも弁理士の目から見ると既に出願可能な発明と評価できるものもあり、逆に特許調査をしないことにより無駄な開発経費を費やす事例も多々あります。開発を開始する時点で弁理士に相談することにより、効率的な開発、開発成果の適切な保護を図ることができます。

■2.技術開発に着手したらなるべく早く相談する
 我が国の産業財産権制度は先願主義(最初に特許庁に出願した者に権利を与える主義)を採用していますから、一日も早く出願することが大切です。出願前に公表したり、販売したりすると、原則として権利化の資格を失うことになりますから、必ずその前にまずこ相談下さい。
 たとえ製造委託先、部品購入先、発注先などであっても出願する前に実施化などの話を持ち込むことも原則としては控えるべきです。具体的な試作品がない段階でも大丈夫なのでなるべく早めに弁理士に相談しましょう。

■3.できるだけ資料をそろえて
 技術内容を弁理士に説明するときは、その説明書、図面、製品の写真など、できるだけ多くの関係資料をそろえて下さい。技術の説明書には、たとえば、特許出願の場含、発明に対する従来技術の説明、発明の目的、構成、効果(利点)などに分けて説明することが必要です。もっとも発想だけでまだ図面や写真がない!といったケースもあると思います。
 たとえば機械の発明では図面がないというのはなかなか厳しいのですが、それでも当初はエッセンスだけを抜き出して取りあえず先願権を確保し、実施例を充実させて国内優先権出願を行うこともできますから「まだとても出せる段階ではない」と考えずに念のために(電話でもよいのです)相談してみるのがよいと思われます。

■4.技術の説明は従来技術と対比して
 さて、みなさんが特許事務所に来たとします。あるいは弁理士にみなさんの工場に来てもらったとします。ここで発明の説明をしていただかなければなりません。
 どんな技術も突如現れるということはありません。必ず従来の技術の問題があってそれをクリアするという流れがあるはずなのです。ですから当該発明の技術説明では従来技術、周辺技術と対比させながら筋道を立てて説明していただく必要があります。弁理士はお話を聞いて十分技術を理解したうえで、発明、考案として組み立てます。また、どうしたら広く、強い権利がとれるかをアドバイスし、場合によっては不足のデータを指摘します。

■5.必要に応じて調査を
 出願の前に先行技術、類似技術の調査を行うことをお勧めします。調査をしていなければ相談した弁理士から「絶対に調査をすべきです!」という助言があるはずです。発明者はどうしても「すごい発明だ!よーしこれは売れるぞー」という観点からのみ見ていることが多いからです。その発明を実施するとだれかの権利の侵害になってしまうかも?という観点からはなかなか見られません。
 弁理士は仕事柄醒めた目で見ます。むしろ侵害となることを心配いたします。特許の可能性があるかどうかはその調査の過程で出てきた資料に基づいて判断することになります。つまり調査はまず侵害ではないかどうかを検討する資料であり、次に特許性を判断する資料となるのです。

■6.発明を生かすも殺すも明細書しだい
 発明・考案の技術的範囲は、特許請求の範囲(実用新案登録請求の範囲)によって決まります。また、特許請求の範囲は明細書全体と整合性が取れ、実施例に裏打ちされていなければなりません。化学系の発明ではデータの充実が必要です。機械系の発明ではなるべく細かく機械の構成を図示し説明します。これらは将来の補正の対処を容易にするためでもあります。
 また、権利化された後は権利侵害に対してこの内容で勝負するわけですから、権利内容が狭く解釈されても困ります。特許請求の範囲に不要な限定はないかよく検討します。もちろん誤字や文章が通じない部分があっても困ります。弁理士の立場からでは明細書はクライアント、特許庁、裁判所のすべてにおいて満足いくように記載がされていなければならないのです。もちろんクライアントのみなさんは出願前の原稿にはしっかりと目を通していただく必要があります。

■7.依頼ははじめから
 特許庁から拒絶理由の通知書(審査結果を知らせるもの)が来てから、困って弁理士に委任することがありますが、これは極めてまずいやり方です。途中から受任した場合、明細書に新たな技術的説明を追加できませんので、修正できる範囲が制限され、不十分な権利しかとれないことがしばしばあります。強い権利を取得するためにも、経費を節約するためにも、最初から弁理士に委任するのが賢いやり方です。
 なお、弁理士の費用は、依頼者との合意により定められるもので特許事務所により、又依頼する案件の内容により異なります。依頼の際には、依頼の内容と弁理士費用について、弁理士との問でしっかり確認しておくことが重要です。よくあるトラブルは出願時にかかる費用を特許になるまでのトータルの費用と勘違いしてしまうことです。一般的に特許出願は出願(申請)後も手続きの節目節目で費用はかかるものなのでお気をつけください。

■8.顧問弁理士としての活用を
 知的財産権の保護は、出願のみに頼って得られるものではありません。特許などの産業財産権と、不正競争防止法、著作権法などを総合的に利用してはじめて、効果的に保護され、経営資産としての知的財産権となります。そのためには、信頼できる弁理士を顧問として活用し、あなたの会社の経営をよく知ってもらった上で、知財戦略のアドバイスを受けることをお勧めします。

弁理士 柴田 淳一