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新聞掲載記事

更新:2008/04/11

海外での知的財産権の保護

 よく宣伝や広告で「世界特許のテクニック!」とか「世界特許取得済のサンダル!」というように、「世界特許」が取得されたとの宣伝文句を見かけませんか。これは非常に不思議な表示なのです。
 
 実は、一つの特許申請手続が認められれば世界中で有効な特許権を取得できるという意味での「世界特許」は未だ世の中には存在しません。そもそも特許制度はそれぞれの国の産業政策の一つとして発展した側面があり、国ごとあるいは地域ごとに特許制度が存在しています。よって日本で特許権が取得できてもその権利は外国には及びません。
 これらを世界単一の制度にしようという努力はされていますが、各国の事情・制度の違いなどから未だに実現できていないのが現状です。世界中でこの発明を特許によって保護したい、と思うのであれば各国ごとに特許権取得のための手続を行う必要があります。特許制度をもっている国は130か国以上あります。それら全部の国々で各国ごとの手続を行うことを考えると膨大な手間・労力・費用がかかることは明らかです。つまり「世界特許取得」は大変なのです。

 では、外国でも特許権を取得する必要があるのでしょうか。まず考えられるのは、外国で製品を販売するので独占的に実施できるように特許を取得したい場合が考えられます。また、最近特にその必要性が高まっているのが模倣品対策の手段として特許を取得する場合です。
 現在模倣品が海外で大量に作られてその対策に追われるという問題が後を絶ちません。この問題は日本の大企業や有名ブランドだけの問題ではなく「まさかうちのなんか真似するヤツなんておらんだろ」と思っている中小企業の製品であってもビックリするくらいの模倣品が流通しています。
 模倣品についての対策を誤ると、本物(真正品)の売上の急減、粗悪な模倣品を購入した顧客からの苦情対策、模倣品の海外輸出に伴う第三国での対策などを招くこととなり大変な負担となります。これらを未然に防ぐ手立ての一つとして、各国にて特許権のみならず意匠権や商標権などの産業財産権を取得することが大いに役に立つのです。

 外国で特許権を取得するためには、大きく分けて、各国ごとに直接出願する方法と特許協力条約(PCT)に基づく方法があります。特許を受けるためには基本的に世界中で一番新しいもの(新規性)である必要がありますから各国ごとの直接出願は世界中で同時に行う必要があり準備や手続が非常に大変です。
 この際パリ条約という産業財産権の保護に関する国際条約で規定されている、優先権という制度を利用することが有効です。ここで規定される優先権を主張して外国出願をすることにより、ある特許出願から1年以内に同内容の特許出願をしたとき、その出願をもとの出願の時に出願したものと同等の扱いを受けることができます。一方PCTは特許の出願の手続に関する国際条約で、この条約に規定される国際出願という出願方法を選択することにより複数の国に対する出願を一度にまとめて一回ですることができ、その出願の日に各国で特許出願したことになるという制度です(この点「世界特許」っぽいですね)。

 なお、どの方法であっても出願後は出願した国ごとで諸手続をする必要があります。また、最終的にはそれぞれの国の特許庁がそれぞれ審査し特許するかどうかの判断をしますので、ある国では特許が取得できても他の国では特許が取得できない場合もあります。どの方法を選択したほうがよいかはケース・バイ・ケースで違いますので、十分検討した上で決定する必要があります。また、当然ながら出願する国が増えれば増えるほど費用も大きくなってきますので費用対効果も勘案することが重要です。


日本弁理士会東海支部 UR-10委員会
委員 弁理士 水野 祐啓