東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/02/27

知的財産セミナー2009終了報告

 去る1月30日(金)ヒルトン名古屋にて日本弁理士会および日本弁理士会東海支部主催による知的財産セミナー2009が開催されました。
 日本弁理士会東海支部では、平成9年1月31日の支部設立以来、支部設立を記念して毎年1月末に知的財産セミナーを開催しています。
 今年は、世界の趨勢が「プロパテント時代」から「プロイノベーション時代」に移りつつあることを踏まえ、「イノベーション時代の知財マネジメント」について、議論を行うために知的財産セミナー2009を開催しました。


第1部 特別講演
 この知的財産セミナー2009では、特別講演として、特許庁長官 鈴木隆史氏により「政府の知財戦略~世界の動向と日本の政策支援」の講演を行って頂きました。
 鈴木氏からは、現代の産業構造を巡る3つの潮流、イノベーションを支える知財システム、世界の特許出願動向、拡大する特許審査ハイウェイ、シームレスな検索環境の検討、弁理士に求められる役割、新たな知財システムの構築等についてお話いただきました。
 現代の産業構造を巡る3つの潮流として(1)グローバル化-グローバル市場の出現、(2)オープン化-オープンネットワーク型の産業構造へ、(3)知識経済化-有形資産から知的資産への紹介があり、国際的な競争力を強化するためには、イノベーション創出・促進策を推進する必要があり、そのためには研究開発(創造)から活用までの知財システムの構築・強化が急務であるとの説明がありました。
 世界の出願動向より約4割が外国出願であり、しかも各国に重複して出願されているため、審査ハイウェイを拡大させ、学術論文他も加えたシームレスでオープンな検索環境のシステムの構築が必要であり、新たな知財システムを構築して、イノベーションの創出・促進ならびに国際競争力の強化を図るとのお話をいただきました。


第2部 基調講演
 基調講演として、東京大学 知的資産経営 特任教授 妹尾堅一郎氏により「イノベーション時代の知財マネジメント」の講演を行って頂きました。
 妹尾氏からは、成長か発展か-モデル錬磨かモデル創新か、オープンイノベーション、イノベーションプロセスの分担・協業化、三位一体経営、事業モデルのせめぎあい等についてお話いただきました。
 主な内容として、発展は、新規性・進歩性に富むモデルを創出して普及定着させ、新規モデルに不連続的に移行するイノベーション(モデル創新)であり、成長は、既存モデルの洗練・磨き上げ、モデルをより効果的・効率的に運用し、生産性を向上するインプルーブメント(モデル錬磨)である。
 イノベーションの勝利の方程式が変容して多様化し、一社が単独でイノベーションを仕掛けることが難しくなり、新規ビジネスモデルの展開によるオープンに協働し合う水平分業型イノベーションの時代になった。
 製品特性に沿った急所技術の開発、市場の拡大と収益確保を同時に達成するビジネスモデルの構築、プロペラ権利化と秘匿化、公開と条件付きライセンス、標準化オープン等を使い分ける知財マネジメントの展開の三位一体経営が企業の死活を決める。


第3部 パネルディスカッション
 パネリストとして内閣官房知財戦略事務局参事官の高山芳之氏から、技術革新・市場の変化の加速、経済のグローバル化の進展、オープンイノベーションの加速、デジタル化・ネットワーク化、オープンイノベーションに対応する知財制度の整備等についてお話いただきました。
 富士フィルム執行役員知財本部長の浅見正弘氏から、事業展開の振り返り、事業展開と技術展開、過去の技術展開の成功事例、最近の技術展開例、知財活動等についてお話いただきました。
 林原生物化学研究所常務取締役の三宅俊雄氏から、独自技術で高付加価値・製品と新しい価値観の創造-Only OneでNo.1・テーマはシーズから、株式非公開-長期にわたる研究の確保、創造力の原点-幅広い異分野の知識と経験を持つこと、トレハロース・プルラン等についてお話いただきました。
 日本IBM理事知財本部長の上野剛史氏から、変化するイノベーションの性質、プロプライエタリー・イノベーションとオープン・イノベーション、時代とともに進化・変化するIPの価値、Linuxの例、特許開放によるイノベーション促進、オープンな標準等についてお話いただきました。

 その後妹尾先生をモデレーターとして、各パネリストにより、「事業戦略と知財マネジメント」をテーマとして、パネルディスカッションが執り行われました。イノベーション時代における各社各様の事業戦略と知財マネジメントが明らかになり、多くの示唆を得ることが出来ました。
 この知的財産セミナーは、毎年、好評を博しており、本年は、350名ほどの参加者があり、終了時間が予定の時間を過ぎても殆ど退出者が無く熱心に聴講して頂きました。
 来年度も同様の知的財産セミナーを1月29日(金)に予定しておりますので、本年の12月頃に日本弁理士会東海支部のホームページ(http://www.jpaa-tokai.jp/)をご覧いただければ、テーマ、申込み方法等が掲載される予定です。

[写真右上:鈴木特許庁長官による特別講演]
[写真左下:妹尾東京大学特任教授による基調講演]
[写真右下:パネルディスカッションの様子]

日本弁理士会東海支部 副支部長
弁理士 高橋 克彦