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新聞掲載記事

更新:2009/04/13

著作権法に関する判例紹介~著作権侵害となる場合、ならない場合~

 昨年ぐらいから著作権法に関する話題が多くなってきています。例えば、とある市がイベントのためにデザイナーに製作を依頼した「ゆるキャラ」を巡ってのデザイナーと市との間の事件、某有名歌手が長年自分が歌っていた歌を作詞者の了解を得ずに一部改変を加えたことにより、作詞者の怒りをかい、その歌を歌うことができなくなった事件、某有名プロデューサーが、自分が作曲した楽曲の著作権をすでに売り渡しているにも関わらず、別の人に買取を持ちかけて5億円を騙し取った事件などです。
 いずれもマスコミによって大きく報道されてはおりますが、著作権法上の何に違反するのか、何故このような事件が起こるのかについて、詳しく解説している記事はあまり見かけません。これは著作権法が難解であることと、判例に委ねられている部分が多分にあることとに起因しているものと思われます。そこで今回は、どのような場合に著作権侵害になるのか、ならないのか、よく知られている判例を紹介したいと思います。

社交ダンス教室著作権侵害事件 名古屋地裁判決平成15年2月7日
 この事件は、社交ダンス教室が社交ダンスを教えるに際して流している音楽は、音楽著作物の権利者に無断で演奏しているとして、演奏の禁止、損害賠償の支払い等を求めた事件です。
 社交ダンス教室側は、社交ダンス教室は、営利を目的としたものではなく、「公正な利用(フェア・ユース)」に該当すると主張しました。
 これに対して裁判所は、「受講料がダンス教師の技術の向上や、各施設の運営費用に振り向けられれば、各施設の人的物的施設が維持改善されて同施設の競争力が高まり、更に受講生の獲得、受講料収入の増加につながるという循環を生み出すことが考えられるから、社交ダンス教室が営利を目的としないとはいえない。」また、「社交ダンスの教授に際して音楽著作物を演奏することは必要不可欠であり、音楽著作物の演奏を伴わないダンス指導しか行わない社交ダンス教室が受講生を獲得することはおよそ困難であって、そのような社交ダンス教室が施設を維持運営できないことは明らかであるから、本件各施設における音楽著作物の利用が営利を目的としないものであるとか、受講料がその対価としての料金に当たらないとかの社交ダンス教室側の主張は認められない。」との判断を示しました。

実用新案万年カレンダー事件 大阪地裁判決昭和59年1月26日
 この事件は、カレンダーと色彩で分類した索引表とを備えた万年カレンダーで実用新案権を取得した権利者が、この万年カレンダーを複製したものが掲載されている書籍を製造販売している者に対して、著作権の侵害と、実用新案権の侵害であるとして、書籍の製造販売の差止めを求めた事件です。
 裁判所は、実用新案権の侵害は認めましたが、著作権の侵害は認めませんでした。「権利者が、著作物性を有すると主張するものは、万年カレンダーの構成及びその索引表に色彩を採用した着想(アイデア)そのものに帰着するものであるが、著作権法は、そのような着想(アイデア)自体に著作物性を与えていない。」との判断を示しました。私も、著作権によってアイデア自体を保護することができるとの誤った認識を持っている方から相談を受けたことがあります。気をつけて下さい。


日本弁理士会東海支部 UR-10委員会
委員長 弁理士 中村 繁元