東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/11/30

東海支部の知的財産出前授業

1.小学校での知的財産出前授業

 東海支部では、平成16年4月から、教育機関支援機構を設けて、小・中・高校、大学の実施する知的財産に関する教育の支援、出前授業、出前講義を、継続的に実施しております。これらの活動は、東海支部の社会貢献活動として、社会から高い評価を頂いております。
 小学生を対象とする授業の場合には、特許の産業経済に果たす役割の意味よりも前に理解して欲しいことが、いくつかあります。
 その一つは、模倣ではなく独創的なことに関心を持って欲しいこと。もう一つは、発明が人間としての豊かで潤いのある生活に貢献し、文明に発展すること。さらには、独創性ある知的創造物を尊重し、人間生活を豊かにすることに貢献した発明者を尊敬する精神を抱くこと。知的財産の活用により、資源小国の日本の将来が開けることなどです。
 小学校での出前授業について紹介します。

2.工夫する力の養成

 風呂場で洗髪する場合に、右手でレバーを押して、左手の手のひらで、パイプから出るシャンプー液を受けます。片手を怪我している場合に、皆さんならどうしますかと、疑問を生徒に投げかけ、片手でも操作できるシャンプーボトルの改良を考えさせます。頭をシャンプー液の出口に直接持っていき、片手で操作して、頭に液を塗る。足でレバーを押して片手の手のひらに受けるなど、いろいろ、発想します。そのうち、片手で押す操作と、同じ手のひらで、落下するシャンプー液を受けることができる構造がないかと、ヒントを与えます。
 いろいろと、生徒は、ユニークな改良を発表します。そして、最後には、シャンプー液を出すパイプをレバーよりも上方に伸ばして、下方に屈曲させて、手の甲でレバーを下方に押し、上を向いた手のひらで液を受けることができることに、気が付きます。このような一寸した工夫が、社会を変える大きな発明につながることを説明します。生徒は、工夫を完成させた時、充実した表情を示します。

3.知的創造物を尊重する精神を養う

 このように人が苦労して創作した発明品や、それを社会に提供した発明者が尊重されるべきことと、その発明品の模倣がどのように防止されているかを分かり易く解説します。
 動物を登場人物とした童話風カラー劇画をスライドにした、電子紙芝居を上演します。登場人物の発声は、出前授業に参加する4~5名の弁理士によるライブで行います。
 主人公の犬のレオ君が一所懸命、努力してやっと完成した独創性あるいちごジャムパンを製造販売して、村人に好評であったところ、その製造方法をこっそりと木の陰から見ていたきつねのシンが真似をして、そのパンを低価格で販売したために、レオ君のパンが売れなくなると言うのが、物語の始まりです。
 まず、この場面で、人が一所懸命、努力してやっと完成させた独創性あるものを、模倣されてしまうレオ君の抱く悲しさの感情を、生徒に共有してもらいます。これにより、生徒が、人を思いやる気持ちを育んでくれればと考えています。
 次に、レオ君は、シンの模倣を止めさせることができないかと、弁理士のサルのキヨじいさんに相談し、特許というもの、特許制度を知ることになります。そして、また、大変な努力をして、食感の良いカレーパンを、特許を取得して、製造販売するというものです。これも、シンに同様に模倣されるのですが、今度は、特許権があるので…、という話です。
 このように、生徒は、動物仕立ての物語の中で、自然と、独創性あるものを尊重する精神と、独創性あるものを保護するしくみを学びます。
 生徒の表情を見ていると、良く、理解できていることが解ります。

4.科学の不思議さを体験できる装置を作る

 紙コップを3つ準備し、その内面を黒く塗ります。一つの紙コップの底に、何色にも発光する発光ダイオードを一つ設けます。別の2つの紙コップの底には、1cm四方位の穴を開けて、その穴に、回折格子を貼り付けます。このうちの一つの紙コップと、発光ダイオードを設けた紙コップとを、開口部を向かい合わせにして、開口部の周囲をテープで固定します。
 そして、回折格子を設けた紙コップに、回折格子を設けたもう一つの紙コップを、2重になるように重ねます。これで、発光ダイオードを電池で光らせれば電子万華鏡は完成です。回折格子を設けた最も外側の紙コップを回転させれば、一つの発光ダイオードの光が、幾つものの光となり、紙コップの回転と共に、この光のパターンが回転します。
 まさに、昔、鏡を三角柱にして、内部にさまざまな色のセルロイド片を入れた万華鏡と同様な光景を見ることができます。 いくつもの花火や、満点の星空のように見えます。
 生徒は、自分が作った、この電子万華鏡を完成させて、満足し、また、その結果に、大変に喜びます。
 この工作の良いところは、構造が簡単でありながら先端の科学技術を用いており、予想しなかった光景を見ることができるという科学の不思議さを生徒が体感できる点にあります。
 最後に、生徒に、「何故、一つの発光ダイオードの光が、このように、幾つもの光源となり、回転するのでしょうか。」と、質問をして、科学の何たるかを考えさせます。原理は、かなり難しいために、説明することなく、皆さんが、将来、理科の勉強を重ねて行くうちに、このことは、昔、あの時に作った電子万華鏡に使った回折格子の原理なのであると、きっと気がつきます。その時には、今日のことを思い出して下さいと言う言葉で、工作を終えます。
  科学教育とは、原理を教えるのではなく、それを、自ら、考えさせて、気付かせることではないでしょうか。

5.エジソンの言葉

 最後に、私にとって発明は、自然の秘密を解き明かして、それを人間の幸せに役立てることとのエジソンの言葉と、エジソンが亡くなった日の夜はアメリカ中の家庭が消灯してエジソンの死を悼んだというエピソードを紹介して、授業を終えます。
 東海支部では、小学生を対象に、このような出前授業を行っております。生徒が自分で考えるような授業にしたいと考えております。興味をお持ちの方が御座いましたら東海支部までお尋ね下さい。

日本弁理士会東海支部   
教育機関支援機構 機構長
弁理士 藤谷 修

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