東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2009/09/30

元気のいい中小企業紹介★2★

(1)はじめに

 本年度の日本弁理士会東海支部の活動の大きな柱として中小企業支援活動があります。昨今の厳しい経済環境の中、現状打破のため、中小企業こそ「何か新しい取り組み」をしなければなりません。
 私たちは、「元気のいい」中小企業経営者の皆様に、今現在「元気がいい」原因となったその企業における「過去の取り組み」についてお話を伺っています。元気の原因となった過去の取り組みに普遍性があれば、その普遍性こそ、中小企業経営者が現在行うべき新しい取り組みのヒントになると考えたからです。
 そこで、多くの中小企業経営者の皆様から生の声をお聞きして、元気を生んだ過去の取り組みをご紹介させていただくとともに、支援活動のベースとなる現場感覚を養おうと考えています。今回は、第2回目です。

 今までの中小企業インタビュー結果から、中小企業の採るべき「取り組み」は『後発メーカに徹すること』と一応の結論付けをしています。いわゆるローリスク-ローリターン戦術です。現在の経済環境ではこれこそ現実的な戦術と考えます。紹介する企業選択の観点を後発メーカの立場からとしていますのは、市場性が不透明な新製品へ投資は現在の経済環境において中小企業にとってリスク負担が過大となると考えたからです。
 後発メーカとして市場に参入する際、先発メーカの知的財産権を尊重すべきことはいうまでもありません。日本の某カメラメーカが複写機を開発するに際し、米国の先発メーカの特許を尊重しつつも、その特許網をかいくぐって開発にこぎ着けたという有名な開発物語があります。
 しかし、中小企業には先発メーカの特許を分析する知財部がありません。いかがいたしましょう? 私たち弁理士を利用していただければ勿論よろしいのですが、費用がかかることは否めません。といって、先行特許の調査を怠って、開発品が先発メーカの特許に抵触することとなれば、それはそれで大変です。

 先行特許調査は、開発対象(経営者が見いだしたニーズに対する解決策)の方向が定まった時点で行うべきものであり、この時点では具体的な解決策は明確化されていないはずです。即ち、この解決策こそ開発対象であり、一般的には解決策は自社開発します。繰り返しになりますが、ニーズを見いだしたら闇雲に開発を行うのではなく、開発が無駄にならないようにその前に行うのが先行特許調査です。実際には、市場調査と先行特許調査はセットになるはずです。
 このような開発のタイムチャートからして、ニーズを見いだした時点でいわゆる未利用特許の利用を検討されてはいかがでしょう。特に昨今では、大学や公設試験所の敷居が低くなっています。大学等は開発補助金の申請においても有力なパートナーとなります。大学等においては特許出願をする前にその発明の価値(特許性、市場性)を評価しています。従いまして、ニーズの解決策として大学等の発明が利用できるのであれば、トライの価値ありです。大学が特許保証(その特許出願の発明が他社特許に抵触していないことの保証)をするものではありませんが、先行特許調査を何もしないことに比べれば、リスクが大幅に低減されます。深窓の大学で生まれた発明がそのまま使えるものとは限りません。しかし、自社開発が必ず成功する保証もありません。少なくとも、大学発明にアクセスすることまではタダの範囲です。
 以上の観点から、今回は、大学の発明をうまく利用している企業を紹介します。

(2)元気のいい中小企業紹介★2★-サニア工業株式会社-

 サニア工業株式会社は、高畑敏彦代表取締役会長により1970年に設立されました。当初は自転車部品の製造工場としてスタートしました。その後、プレス加工・溶接加工・プレス金型設計製作、さらにスプリングの製造販売を主な業務とし、金属加工の分野で順調に業績を伸ばしてきました。
 設立後30年が経過し、社業も十分に安定しかつ体力を蓄えたこととでしょう。高畑氏はこれまでの社業を後継者にまかせ、福祉事業に乗り出しました。
 サニア工業株式会社は製造メーカですので、福祉事業といっても得意分野を生かした福祉機器の製造及び販売となります。2006年には第二種医療機器製造販売業許可を取得していますので、その本気度がわかります。
 最初は溶接加工技術を生かした介護用の電動昇降座椅子「ざ・特等席」を製造販売しました。引き続き、電気マッサージ器「こりゃタマラン」、「リフレッサー」や換気扇付クッション「そよ風」を自社開発しました。
 現在の注力製品は座圧分散マット「特等席アクア」です。

 車椅子などに長時間座ることを余儀なくされる人用の座圧分散マットとして、以前は発泡ウレタンマットや空気マットが使われていました。しかし、前者では座ったときの変形が大きく、また戻りも遅いため繰り返し使用に適しません。後者では戻りが早すぎるため座がふらつき安定性に欠けます。これに対し、「特等席アクア」ではウォータマット内を堰により複数の部屋に分割し、堰に隙間(オリフィス)を設けることで、部屋と部屋の間で液体の移動を可能としています。これにより、座圧が分散され座面全面が等圧となり安定性が確保されます。また、液体の粘度とオリフィスの大きさを調整することにより、液体の移動速度を調節して変形速度(戻りの速度)の最適化を図っています。
 この技術は静岡大学の発明がベースとなっています。サニア工業はこの発明を評価し、導入しました。製品化において大学発明のブラッシュアップが必要であったことは言うまでもありません。
 既述の通り、サニア工業は自社開発の力を十分に持っています。それにもかかわらず、大学の発明の価値を見抜き、それをうまく利用されている点を読者の皆様はどのように評価されるでしょう。

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サニア工業株式会社
〒497-0002 愛知県海部郡七宝町大字遠島字上江越1530
TEL:052-441-5418
FAX:052-441-5478
HP:http://www.sania.co.jp/index.html
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日本弁理士会東海支部 知的財産支援委員会
副委員長 弁理士 小西 富雅

電動昇降座椅子「ざ・特等席 電動昇降座椅子「ざ・特等席

座圧分散マット「特等席アクア」 座圧分散マット「特等席アクア」