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新聞掲載記事

更新:2010/06/30

特許権を取得するために~拒絶理由通知の対応の仕方~

 特許出願をして、さらに出願日から3年以内に審査請求手続きを行うと、特許審査官によって特許出願の内容が審査されます。そのうち大半の出願については「拒絶理由通知」という書類が特許庁から送られてきます。出願してから何事もなく特許となる出願はそう多くはありません。この拒絶理由通知への対応の仕方が今回のテーマ。拒絶理由通知への対応の仕方といっても、詳細を述べるには紙面の都合上難しいため、ここでは拒絶理由通知に対する心構え、のようなものをお伝えできればと思います。
 まず拒絶理由通知とはそもそも何なのか。分かりやすく言うと、「あなたの出願は、特許法に規定されている要件を満たしていないので特許にすることはできません」という特許審査官からのお知らせです。このお知らせに対し、通常は「意見書」で出願人の意見を述べたり、「手続補正書」で出願内容を修正することで対応します。でも拒絶理由通知という言葉の響き、決してうれしいものじゃありません。“拒絶”という、非常にネガティブな言葉が含まれているので、なんとなくお上(かみ)から「NO!」と言われているような気がします。意見書とか手続補正書を提出してもダメなんじゃないのか?そう思いたくなるかもしれません。やはり、ダメなのでしょうか・・・?いいえ、実際にはなんとかなるケースが多いのです(もちろん、なんともならないものもあります)。さらに言えば、この拒絶理由通知を上手く利用すれば、より適切な権利範囲の特許権を取得することもできます(図参照)。そんなワケで、拒絶理由通知が届いてもそれほど慌てる必要はありません。どっしりと構えていれば良いのです。ただし、意見書・手続補正書ともに提出期限があるので要注意。
 実際の拒絶理由通知の中を覗いてみましょう。すると「特許法第29条1項第3号の規定により・・・」といった具合に、法律用語で一杯です。そもそも特許権を規定しているのが特許法という法律になるのですから、そこは仕方がありません。特許法なんてわからないから読んでもダメだなんて思わずに、グッとコラえて、拒絶理由通知に正面から向き合って読んでみることをオススメします(もちろん、わからない法律用語は調べてください)。じっくり読んでみると、そこに含まれる審査官からの“メッセージ”が読み取れるはずです。一見すると、単に法律用語が並んでいるだけのような気がするかもしれませんが、そこには特許審査官からのメッセージがちゃんと込められているのです。メッセージを正しく読み取れば、おのずと何をすれば良いかが見えてくるはず。筆者はいつも、拒絶理由通知とは審査官からの質問状で、意見書はその質問に対する回答を述べるもの、だと思って対応しています。一方、そのメッセージを正しく読み取れないまま対応をしてしまうと、審査官からの質問とそれに対する答えが噛み合わないという結果となり、特許に導くことは難しくなります。要するに拒絶理由通知書を読んで、審査官が何を言いたいのかを読み取ることができるかどうかが、拒絶理由通知対応のカギということです。
 それでもやっぱりなんだかよくわからないし、法律は・・・という方のために、最後に少しだけ拒絶理由通知によく出てくる特許法の条文を2つほど挙げて、その条文について簡単な説明と、その条文から読み取れる審査官のメッセージを解説します。
 まず、特許法第29条1項。この条文については、よく「新規性」などと呼ばれています。拒絶理由通知の中で登場する場合には、あなたの発明には新しさが無いですよ、という意味になります。そこに含まれている審査官のメッセージとしては、「あなたの発明には新しさが無いと思います」、というところでしょうか。ただ、これだとそのまんますぎるので・・・もう少し言い方を変えれば「私はこの発明には新しさが無いと思います。もし新しさがあるのなら、それを示してくれませんか?」というところでしょうか。余談ですが、この第29条第1項という条文に、第37条という条文がくっついて来ることが最近多いようです。詳細は割愛しますが、「第29条+第37条」はちょっと注意が必要です。
 2つ目は、特許法第29条第2項。これはよく「進歩性」などと言われているものです。かなり頻繁に出てくるのでぜひ憶えておきたい条文です。意味としては、あなたの発明は従来技術から容易に思いつくものです、という意味。そこに含まれているメッセージとしては、(あくまで一例ですが)「あなたの発明の優れている部分を教えてください」というところでしょうか。

日本弁理士会東海支部
弁理士 原田 征