東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2010/12/28

東海支部 教育機関支援機構の出前授業

 知的財産権というと、「難しい。」、「何それ?」、「わからん!」、そんな声がよく聞こえてきます。しかし、そんな心配は全く無用です。出前授業は、知的財産権の必要性や活用手法を体感させてくれるからです。

1.知的財産権の必要性-エフ博士のサラカップル

 「エフ博士のサラカップル」とは、プロ野球を観に行ったときに(椅子だけしかありませんからお皿もコップも置けません)、ジュースを飲みながらお菓子も食べることができるというアイデア品です。サラカップルを発明するのにエフ博士は多大な時間と労力をつぎ込みました。対して、できあがったサラカップルを模倣することは簡単にできます。従って、偽物は本物よりも安く売ることができます。同じ品質ならば本物ではなく安い偽物の方が良く売れます。
 しかし、エフ博士は賢いことに、アイデアを思いつくと直ぐに、特許出願をし、特許権を取得しました。一時的に、サラカップルの業績不振がありましたが、特許権のおかげで、エフ博士は偽物が出回っても、偽物の製造を止めさせることができ、かつ、偽物によって得られた利益を返してもらえました。結果、エフ博士の苦労は報われ、その後は、エフ博士は安心してサラカップルを製造販売し、収益を上げることができました。
 特許権による収益は、次の新商品の研究開発資金にすることができます。また、豊かで楽しく、活力に溢れた活動の基盤になります。新たな雇用機会の創出にもつながります。
 「エフ博士のサラカップル」は、当機構が立ち上げられた2002年から多くの小学校において体験型授業として実施されています。沢山の子供達に知的財産権の必要性に対する「気づきを芽生えさせるきっかけ」になっていれば幸いです。

2.知的財産権の活用-おにぎりパック事件

 おにぎりマニアのパリ助は、お弁当のおにぎりが湿気ってしまうのが気がかりでなりません。そこで、「おにぎりパックの中央ミシン目」というアイデアを思いつきました。これは、海苔だけを包む「中央ミシン目を設けたフィルムパック」をおにぎりパックに設けたもので、なかなかのアイデア品でした。中央ミシン目に沿ってフィルムを開けばパリっとした海苔を簡単におにぎりに巻くことができたからです。パリ助は特許を取得して「パリのりパック」の製造販売を開始します。
 ところが、あるとき類似品「のりパリパック」が出回っていることがわかりました。そこで、パリ助は、自分の特許に基づいてのり男社長に特許権侵害の警告をしました。しかし、のり男社長もまたパリ助よりも早く特許出願し、特許権を取得していました。のり男社長の「のりパリパック」は、海苔だけを包む「上部に切り欠きを設けたフィルムパック」をおにぎりパックに設けたもので、これもなかなかのアイデア品でした。
 調子に乗ったのり男社長は、パリ助の特許出願後に、上部の切り欠きの下に「二つのダイヤ形の孔」を設けるという設計変更をし、パリ助の特許成立後も、その製造販売を継続しました。この「二つのダイヤ形の孔」は、特許的には、パリ助特許の「中央ミシン目」と捉えることができ、パリ助特許の技術的範囲に属し、その特許権侵害を構成します。のり男社長は本来ならば、「二つのダイヤ形の孔」を止めることを余儀なくされ、損害を賠償する責めを負います。
 一方、パリ助特許は「おにぎりパックの中央ミシン目」で成立していますが、特許的には、「一番上のミシン目」は、のり男社長特許の「上部に設けた切り欠き」と解釈できます。パリ助特許は特許としての瑕疵は無く合法ではありますが、のり男社長特許の利用発明に該当します。よって、パリ助特許の実施品「パリのりパック」は、「一番上のミシン目」が、のり男社長特許の技術的範囲に属し、その特許権侵害を構成します。従って、パリ助も本来ならば「一番上のミシン目」を無くすとか、損害を賠償する責を負うところです。
 最初は、パリ助とのり男社長は特許権侵害の警告をし合い、喧嘩ばかりでした。しかし、事情がわかってくると、打ち解け合い、結果、クロスライセンス契約を結び、両者共にこれまで通り製造販売を継続することになります。
 このように、特許権を取得しておくと、紛争が生じたときに製造中止や損害賠償を回避でき、自社特許に基づく自社商品の製造販売を引き続き行うための武器になります。また、ライセンス交渉も進めやすくなるため、競合他社との信頼関係を築き、取引秩序を強化する礎ともなります。
 「おにぎりパック事件」は、全国各地で実施されており好評を得ていると聞きます。当機構では、「高等学校での実施」に特に力を注いでいます。皆さんの表情が講義型セミナーと比べると全く違って見えます。
 興味のある高等学校の先生方(社会人の方も可)がございましたら、一度東海支部までお問い合わせ下さい。特許紛争劇団がお待ち致しております。

日本弁理士会東海支部 教育機関支援機構
機構長 弁理士 小林 かおる