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新聞掲載記事

更新:2011/05/31

特許出願後の手続について

 新たなアイデアに基づく発明について特許権を取得するためには、特許出願をすることが必要ですが、それだけでは不十分で、その出願に係る発明について特許庁で審査を受ける必要があります。この審査を受けるための手続(出願審査請求)は、出願から3年以内であればいつでも行うことができますが、行わないと、出願は取り下げられたものとして取り扱われ、出願に係る発明は誰でも実施できるものとなってしまいますので、注意を要します。
 出願審査請求を行うと、特許出願は、審査の順番待ちの対象となり、原則的に、先に出願審査請求がなされたものから審査されます。審査は、方式面と実体面の両面から行われ、実体審査においては、特許法に定められた法律、規則に則って、出願に係る発明が特許要件を満たしているか否か判断されます。そして、特許出願の大半については、特許要件を満たしていないとして、登録を拒絶する旨およびその理由(拒絶理由)が通知されます。
 その拒絶理由の中で、最も多いものが、特許法第29条第2項違反、すなわち、“出願に係る発明は従来の発明から容易に考えられるものであるから特許できない(いわゆる進歩性を有さない)”というものです。
 なお、出願に係る発明が進歩性を有するか否かの判断については、特許庁のホームページに審査基準が示されていますので、参考にして下さい。
 拒絶理由の通知を受けた出願人は、その拒絶理由を解消するための手段として、(1)反論の文章(意見書)の提出、(2)出願内容の修正(手続補正書の提出)、という手段を講ずることができます。拒絶理由通知書には審査官の判断が示されていますので、その内容を十分に吟味してから、いずれの方法を講じるのが良いのか判断すべきです。
 そして、出願に係る発明が従来の発明と比較した場合に十分な進歩性を有している(すなわち、審査官の判断は妥当ではない)と考える場合には、意見書のみを提出すれば足ります。
 しかしながら、進歩性欠如に基づく拒絶理由は、特許権の取得を主張する範囲(特許請求の範囲と言います)が広すぎることに起因していることが多いため、通常、特許請求の範囲を減縮する補正が行われます。具体的には、出願時の書類(明細書)に記載されている事項の内、拒絶理由通知の時点では特許請求の範囲に記載されていなかった事項を、新たに特許請求の範囲の内容に加える方法が採用されます。
 そのように特許請求の範囲を減縮する場合には、手続補正書のみを提出することもできますが、同時に意見書を提出して、新たな事項を加えたことにより従来の発明とは異なる効果を奏するものとなったこと等を主張し、従来の発明との差別化が図られたことを審査官に知らせた方が良いでしょう。
 そして、意見書や手続補正書を提出することにより、“出願に係る発明は従来の発明から容易に考えられる”との審査官の心証を覆すことができれば、出願に係る発明を特許へと導くことが可能となります。
 どのような内容の拒絶理由を受けた場合でも、拒絶理由通知書に書かれた内容が不明な場合には、むやみに手続を進めるのではなく、審査官に問い合わせるのが得策です。そのように審査官との間でコンセンサスを形成することにより、迅速に広い範囲で権利を取得することが可能になります。

弁理士 井上 敬也