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新聞掲載記事

更新:2011/12/27

欧州特許講習会の報告

 本年7月22日(金)、長野市のホテルメトロポリタン長野にて、日本弁理士会東海支部主催の講習会「欧州特許出願の留意点」が開催され、その講師を務めさせて頂きました。
 講習会では、欧州特許出願の特徴や注意点を、欧州特許条約制度(EPC制度)の最新改正情報を織り交ぜながら説明いたしました。
 欧州各国で特許出願を展開する場合には各種のルートが考えられますが、その中の代表格といえるのが、EPC制度を活用して欧州特許庁(EPO)に出願を行うルートです。このルートによれば、保護を受けたい国毎に特許出願をするのではなく、EPOに単一の出願を行い、特許付与のための実体審査をEPOで行うことで、指定した各国での特許権保護を受けることができ、欧州での効率的な特許展開を検討される方にとって、利便性の高いシステムということができます。
 EPOでの審査の流れは、日本の特許庁と異なる部分が多いため注意が必要です。
 出願を済ませると、EPOは、どのような先行技術が出願発明に関連するか調査を行います(EESR)。発明の新規性が否認される等、EESRの内容が否定的な場合、EPOへの応答義務が生じます。EESRの内容は出願書類と併せて公開されることになります。EPOで、更に特許付与の可否を判断してもらうには、このEESR公開から6か月以内に出願審査請求を行う必要があります。
 特許可能と判断される場合、日本とは異なり、出願人が内容に同意をする必要があります。
またEPOにおける公用語は英語・ドイツ語・フランス語のため、英語出願の場合はドイツ語・フランス語への翻訳というように、特許の内容を記載したクレームの翻訳作業が必要になってきます。
 次に、EPOで特許査定がなされると、出願人は、指定した国毎に、各国保護有効化手続を行うことになります。この時、それぞれの国の公用語への出願書類の翻訳が必要になってきますが、この手間を軽減するため、現在では、ロンドン協定が結ばれており、この協定加盟国では有効化手続を大幅に簡略化することが可能です。
 またEPOが特許公報を発行すると、第三者側は9か月以内に特許異議申立を行うことが可能です。異議が認められると、苦労して取得した各国毎の保護が全て取り消されることになり、異議申立の成立・不成立が、欧州ビジネスに甚大な影響を与えることになるため、その攻防テックニックの研究が重要になってきます。
 その他、先の規則改正により、分割出願の可能な時期が大幅に制限される等、近年の制度改正の詳細についても説明をさせて頂きました。
 次に、実体審査における留意点として、発明の進歩性の判断に際して日本と異なる手法(課題・解決アプローチ)が採用されている点や、明細書等の補正を行う場合の新規事項追加禁止ルールについて、EPOでは非常に厳格に判断され、上記した異議申立の判断に大きな影響を与える点について説明いたしました。
 講習会では、活発に質疑応答がなされ、受講者の方々が欧州特許制度に強い関心を抱いておられることが窺い知れ、講師として身の引き締まる思いがいたしました。


日本弁理士会東海支部 外国特許実務委員会
委員長 弁理士 岩田 哲幸