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新聞掲載記事

更新:2012/07/31

営業秘密管理のススメ

 最近、営業秘密の流出問題が注目されています。営業秘密の流出には、多くの場合「人」が関与しています。つまり、企業経営において、営業秘密の管理は、技術情報等の知財と人材の両方のマネジメントが交錯する問題だともいえるわけです。以下、中小企業のA社長とS弁理士との会話を通じて理解を深めてみましょう。

A社長:「先日、営業秘密の流出事件が報道されてたけど、営業秘密ってどうやって保護されるの?」

S弁理士:「不正競争防止法という法律がありまして、この法律にいう営業秘密に該当する場合に法的保護を受けることができますよ。」

A社長:「営業秘密に該当ってどういう意味?」

S弁理士:「簡単にいえば、社長が営業秘密だといわれる技術情報が公知でなく有用であって秘密管理されている場合に保護を受けられますよ。」

A社長:「公知でなく有用ってのは当然だな。秘密管理っていうのはどんな管理?」

S弁理士:「秘密管理性が認められるためには、社長が主観的に秘密として管理しているだけではダメで、客観的にみて秘密として管理されていると認識できる状態にあることが必要です。つまり、秘密情報を会社組織としてしっかりと管理していないと、保護を受けられない場合があるというわけです。」

A社長:「そうなのか?。そこまでの管理はやってないな。急に心配になってきた…。先生、すぐに秘密管理規定を作って下さいよ!」

 S弁理士とのやりとりを通じて、A社長の頭の中には、重要な経営課題の一つとして秘密管理体制の構築が位置づけられたのでした。

S弁理士:「社長、少し落ち着きましょう。規定類を整備することだけがよくクローズアップされますが、実は、秘密管理体制を構築する過程が自社の強みを見つめ直すいい機会にもなるのですよ。」

A社長:「それどういう意味?」

S弁理士:「秘密管理体制の構築は、例えば、自社の強みに関わる情報を整理することから始めます。そして、現状の管理状況や管理水準を把握した後、営業秘密と管理ルールを指定し、社内に周知して管理を実践し、定期的なチェック・見直しを図るといった手順で徐々に行っていくことになります。自社の強みは、自社特有の技術やノウハウが源泉になっていることが多いですから、自社の経営の在り方をご自身の目で再確認することによってそれらを最大限に活用することが可能となり、自社の競争力強化につなげることができるわけですよ。」

A社長:「うちの強みって改めて考えたことはなかったな…」

S弁理士:「それに社長が一方的に準備した規定を社員に押しつければ、社員のモチベーションが下がり、せっかく作った規定が無駄になりますよ。社員の皆さんと一緒に自社の強みを掘り下げ、それに関連する情報を管理するルールを自分たちで決め、身の丈にあったところから体制構築を始めてはいかがですか。その方が、秘密管理に対する社内意識も高まるし、社員の方々の納得感も得られ、適切な組織的管理ができると思いますよ。また、各部門の社員同士で検討すればコミュニケーションの促進にもなりますし。そうすれば、風通しのよい組織になって会社に不満がある退職者による営業秘密の流出等を抑制しやすくなると思います。」

A社長:「今まで知財と人材のマネジメントを同じ土俵で考えたことなかったけど、根っこはつながっているんだね。」

S弁理士:「そうですよ、社長。今日はその点に気づいて頂けただけでもよかったと思います。」

A社長:「営業秘密についてもっと知りたいのだけど、何か参考になるものある?」

S弁理士:「経済産業省の『「営業秘密」を管理して会社を守り、強くしよう!』というパンフレットが分かりやすいですよ。」

A社長:「うちみたいな人材の限られた中小企業でもできるかな?。困ったときに専門家に相談できる所ってある?」

S弁理士:「例えば、日本弁理士会東海支部では、平日の13:00-16:00に弁理士が常駐し、知財無料相談をやっていますよ。」

A社長:「ありがとう。さっそく我が社でも取り組んでみるよ!」

自社の重要な経営課題の一つとして「営業秘密」があることを認識したA社長。
あなたの会社もいかがですか?

弁理士 柴田 浩貴