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新聞掲載記事

更新:2012/09/28

白い恋人vs面白い恋人-パロディーに関する争い-

 札幌市の石屋製菓が、自社が製造・販売する「白い恋人」についての商標権侵害と不正競争防止法違反を理由として吉本興業が販売する「面白い恋人」を提訴した事件をご紹介します。このテーマを取り上げるにはやや時期を逸した感はありますが、世間の関心を集めた事件ですので内容を見てみましょう。

-パロディーと法律上の規定

 他人の商標を模した「パロディー」はどこまで認められるのでしょうか。写真で示すように、吉本興業が販売する菓子の包装デザインと「面白い恋人」の文字は、以前より販売されていた石屋製菓の「白い恋人」を吉本興業のビジネスに関連させて改変したものと思われます。
 では、このように他人の商品包装や商標の特色を一見してわかるように残したまま、全く違った内容を表現して作り変えた表示を使用することが認められるのでしょうか。商品やサービスに使用される標識は、商標法と不正競争防止法に基づき保護を受けることができます。しかし、これらの法律には「パロディー」についての明文の規定はありません。他人の表示を模した「パロディー」商標について商標権侵害及び不正競争防止法違反が成立するためには、商標法では、石屋製菓の登録商標「白い恋人」と吉本興業が使用する「面白い恋人」の文字、不正競争防止法では、写真に挙げた両社の包装デザインが相互に類似することが必要です。
 この点、「類似」とは、商品又はサービスの「出所の混同」が生じる範囲を擬制する概念として使用される言葉です。では、文字「白い恋人」と「面白い恋人」、石屋製菓と吉本興業双方の包装デザインを見た消費者は、それぞれの菓子が同一の主体又は相互に関連する主体によって提供される商品と認識するでしょうか。そのような認識を生じず、これらの文字や包装デザインを見てそれぞれの商品を識別できる場合には、出所の混同は生じていないため、商標は類似しないことになります。そしてこの場合には、商標権侵害と不正競争防止法違反は成立しません。

-「白い恋人」に蓄積された信用

 石屋製菓は、商標「白い恋人」を菓子について長年継続して使用し、人件費・開発費・広告費等多大のコストを投下し、相応のリスクを背負って営業上の努力を続けてきたと考えられます。では、石屋製菓のこのような営業活動によって「白い恋人」に蓄積された信用は全く保護する必要はないのでしょうか。即ち、「白い恋人」が獲得した信用に他人がただ乗り(フリーライド)する行為を全く規制しないことに問題はないでしょうか。
 不正競争防止法上には、業務上の信用や商品等表示の周知・著名性へのフリーライド、また、ダイリューション(稀釈化)からの保護を趣旨とする規定(著名表示冒用行為)があり、この規定への該当性を検討することができます。しかし、本規定を適用するための要件としても商標(商品等表示)が類似することが必要であり、不正競争行為に該当すると考えることは難しいかもしれません。
 このような法律の構成において、本事案で裁判所がどのような判断を行うかは、筆者としても興味があるところです。なお、パロディーや商標(商品等表示)の類否判断に関する他の事案を交えて考察すれば、本事案への理解がより深まります。

弁理士 前田 大輔