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新聞掲載記事

更新:2013/11/29

特許制度の多様な利用法~知財功労賞受賞 株式会社ナベル インタビュー~

 平成25年度の知財功労賞(産業財産権制度活用優良企業表彰)を受けた株式会社ナベルの代表取締役社長 永井規夫氏に特許制度の利用についてお話をうかがった。
 特許制度の利用といえば、開発した新製品(発明)が競合他社に模倣されないようにする、つまり独占権としての利用を思い浮かべる方が多いのではないだろうか。ところが、出願から権利化、特許料、弁理士への手数料等を考えると、少なくとも数十万程度の費用がかかる。しかも、特許権を取得したとしても、製品が市場で売れる保証が得られるわけではない。そのため、中小企業の経営者の中には、新製品を開発した場合でも、特許は取得しないと判断する方も少なくないのが現状である。しかし、永井氏は、こうした実態を理解した上で、特許制度には次に述べるようなメリットがあり、費用に見合う効果(費用対効果)が十分にあるという。

開発成果の客観的評価

 まず、特許制度を利用することで開発成果を客観的に評価できるメリットがある。具体的には、発明者(従業員)が新しいものを開発した段階では、その発明は発明者が主観的に良いと判断しているものに過ぎない。しかし、出願段階において、弁理士と打ち合わせを行い、発明内容(新製品)を検討する過程の中で何が従来の問題点を解決するための本質的な構成要件であるか等を突き詰めることで、発明の中から発明者の独りよがりの部分がなくなり、客観的に評価し直すことができるようになる。そして、審査段階において、特許庁の審査官によって、世界中の文献等を基に出願した発明が新しいものかどうか(新規性)、容易ではない工夫がなされているかどうか(進歩性)等の要件が判断される。そのため、特許が付与されれば、発明が今まで世の中に存在していないオリジナリティのあるものであると、国によって客観的に評価されたことになる。つまり、特許出願をすることで、発明(新製品)が既存製品とは異なるオリジナリティを有するものかどうかを客観的に判断できるということだ。

社員教育

 また永井氏は、特許を取得するまでの過程が社員教育にも役立つメリットがあるという。具体的には、出願内容を弁理士との打ち合わせで決める際に、技術的な面だけでなく、特許的な面から発明を捉えることなるため、従業員の考え方や視野を広げることができる。また、発明が特許になれば、国から従業員自身の努力が認められたと感じることもできるため、やる気の向上に繋がり、さらには、新製品に対する責任感を強く持つようになるという。

技術力のアピール

 また永井氏は、特許を取得することは、その技術が自社のオリジナルであることを証明するとともに、顧客に対して、例えば製品に問題が発生した場合の対応力を持っていることのアピールになるメリットがあるという。一例として、他者の売れている製品について特許が取得されていなかったり、権利の存続期間が過ぎていたりする場合、その製品を模倣することはできるが、新たな問題が発生したときに対応することは困難だ。つまり、出来上がった製品をみることで、どのように作るか等のノウハウ(know how)を盗みとることは可能であるが、なぜそのように作るか等のノウホワイ(know why)までを盗むことは困難である。なぜならノウホワイは、今までに存在しないものを開発する際に、失敗を繰り返す過程で得られるものであり、表面上には決して見えないからである。したがって、特許を取得することが、市場に製品を供給してから問題が発生したときにも対応できる技術力を有することのアピールとなり、顧客の信用を得るための有効なツールになるということだ。

取材後記

 今回のインタビューは、事前に質問内容等を知らせることなく行ったが、永井氏はぶれることなく、終始一貫した姿勢で受け答えに応じてくれた。聞いてみると、永井氏は、青年の頃に弁護士を目指して司法試験を受けており、択一式には3回連続で合格しているとのことだった。そのため、法律にも詳しく、非常に論理的な思考の方であった。また、経営者として、「社会的貢献」ということを強く意識しており、その実現のためには、価格競争ではなく、顧客の抱える問題を解決できるオリジナリティのある製品を提供しなればならないと語っていた。こうしたリーガルセンスとビジネスセンスの両方を持つ永井氏にとって、特許制度を利用することはごく自然なことであると感じた。今後、株式会社ナベルのように特許とともに成長発展していく企業がさらに増えれば素晴らしいと思う。

日本弁理士会東海支部 総務委員会
委員 弁理士 金森 晃宏

インタビューしたナベルの永井規夫社長 インタビューしたナベルの永井規夫社長

事務所に飾られた特許証 事務所に飾られた特許証