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新聞掲載記事

更新:2014/02/28

中国の知的財産制度について

 中国の知的財産制度と聞いて、特許制度よりも実用新案制度が頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。私も、中国の特許制度に関する記事の掲載を依頼され、まず頭に浮かんだのは、「特許」ではなく「実用新案」の方でした。
 日本とは異なり、中国では、特許の出願件数よりも実用新案の出願件数の方が多く、実用新案の方が活用され重宝されているようです。日本の企業や弁理士にとっても、中国の実用新案制度に対する関心が、近年、急速に高まっていると感じております。
 平成25年度の日本弁理士会東海支部外国特許実務委員会では、中国の実用新案制度に関し、特に、「手続き面」と「権利のつぶれにくさ」にテーマを絞って調査・研究に取り組んでおります。ここでは、そのテーマに関連した記事を掲載したいと思います。
 中国の実用新案制度の手続きとしては、やはり、特許出願と実用新案出願の双方を同時に提出することができる「二重出願制度」が特徴的ではないでしょうか。この制度を利用すれば、取り敢えずは、無審査で登録される実用新案権により保護を受けることができ、その後、審査を経て特許権を得ることができれば、実用新案権を放棄して特許権により保護を受けることができます。また、補正により特許クレームが実用新案クレームと異なるものとなった場合には、実用新案権を放棄せずに維持することもできるようです。このような二重出願制度は、中国にしかない特異な制度です。中国に出願する際には、この二重出願制度の利用を検討されるとよいと思います。
 もう一つのテーマである実用新案権の「つぶれにくさ」については、やはり、中国の実用新案権は「つぶれにくい」という認識(結論?)でよいと個人的には考えております。例えば、中国の実用新案権を無効審判でつぶそうとする場合、引用できる文献は「2つ」までに限られます。つまり、ズバリの文献を1つ探してくるか、ほぼズバリの文献とそれを補う副引例を1つ探して無効審判を請求しなければなりません。また、引用する文献の技術分野が制限される点も注意が必要であると思います。つまり、引用する文献は、同一の技術分野、あるいは、近接する分野や関連する分野から探さなければなりません。このような制限の下で、実用新案権をつぶす有効な文献1つまたは2つを探し出すことは、かなり至難の業であると思います。中国の実用新案権は、「つぶれにくい」という権利者にとっては好都合な性質を有しているようです。この点が、中国の実用新案制度の利用を促す一つの理由になっているのかも知れません。
 一方で、近年では、中国に進出する外国企業が実用新案権侵害を訴えられ、その実用新案権をつぶすことができず、高額な賠償金を請求される事例が発生しています。今のところ、中国に進出する日本の企業や個人が同じような事例に遭遇したという話は聞いていません。しかし、今後は、日本の企業や個人が中国の実用新案権により高額な賠償金を請求されるという事例も発生し得ると思われます。そのため、中国における知財訴訟に関する知識やノウハウを身に付けていくことも重要であると考えます。

外国特許実務委員会 弁理士 奥村 徹