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新聞掲載記事

更新:2015/07/31

意匠(デザイン)の国際登録制度スタート

   「馬子にも衣装」。今回はこれを改め「馬子にも意匠」といたしましょう。魅力的な意匠(デザイン)は商品
  の価値を向上させます。また、特許の登録に届かなくも意匠登録の可能な場合があります。日本はハーグ協定ジ
  ュネーブアクトという国際条約に加盟しました。日本の個人の方、企業は2015年5月13日から国際条約を
  利用した海外意匠出願が可能になります。ただ、日本の意匠制度とは異なるルールが多くあります。経済性だけ
  に目を向けず、国際条約の特徴を踏まえ利用を慎重に検討する必要があります。

  意匠登録の使い方:
   具体例を挙げて紹介致します。この製品、見覚えがあると思います。アメリカ・アップル社のiPhoneですね。
  ご覧の図面はアップル社がアメリカで取得した意匠登録の内容です。ただ、よく見るとこの図面は実線と破線、
  黒色の着色の有無がありますね。一体何を意味するのでしょうか?アップル社はiPhoneというスマートフォン全
  体の形状を登録したのではありません。操作画面の平面形状の輪郭とその内部のデザインを登録したのです。ポ
  イントの一つは、図面右下にあるメインボタンの位置と数量と形状です。まず、メインボタンの位置をスマート
  フォン本体の下部の中央に配置し片手による操作性を向上させています。また、メインボタンの数量は一つのみ。
  一つボタンとすることにより初期操作の簡便性と迅速性に貢献し、また、操作画面の形状をスッキリとしたデザ
  インに纏める重要な役割を担っています。そして、操作ボタンを丸型にしたため、メインボタンのタッチ位置が
  多少ずれていて操作可能になりました。そこで、考えるべきことは、このような操作画面のメインスイッチの特
  徴を特許で保護することは可能でしょうか。特許の取得を試みることは可能です。しかしながら、特許取得の条
  件は考え出したアイデアが従来の既存技術水準から頭二つから三つ飛び抜けていることが必要です。一方、意匠
  登録にはそこまで必要ではありません。デザイナーの発想として、従来のデザインから頭一つ飛び出していれば
  登録のチャンスがあります。「特許がだめでも意匠がある」。このことを是非覚えてください。

  国際条約を使うときの留意点:
  1.意匠出願ルートの選択肢が増えます
   下図をご覧ください。現在、海外の意匠出願は国ごとに行う必要があります。読者の皆様が国毎に申請書類を
  作成し国毎に現地の代理人を指定し出願を依頼します。
   一方、国際条約を利用しますと、国際条約の加盟国については従来通り直接出願することもできますが、国際
  条約による出願が可能になります。現在、日本の企業にとり重要な市場であるアメリカ、欧州共同体、韓国等が
  加盟国です。また、中国やロシアも2016年以降、加盟の検討しております。国際出願のルートは図Aのよう
  になります。

  2.日本の意匠登録若しくは出願は不要です。
   商標の国際条約(マドリッド協定プロトコル出願=マドプロ出願)は日本の商標登録若しくは出願が必須です
  が、意匠の場合は不要です。日本の意匠登録若しくは出願が不要な場合でも、国際条約を利用することができま
  す。この点では商標の国際条約より利用者側の制約はなく、海外意匠戦略に特化して国際条約を利用することが
  できます。

  3.日本特許庁を経由して出願する必要はありません。
   読者の皆様が直接国際条約の事務局であるWIPO(世界知的所有権機関)に出願ができます。また、出願は
  WIPOのホームページからインターネットにより可能です。(※1)なお、日本特許庁は申請書類の作成など
  の支援とともに、国際条約出願の願書をWIPOに転送するサービスをしております。詳細は特許庁の相談窓
  口に御相談ください 。(※2)

  4.意匠登録の成立前に出願内容が公開(国際公開)されます。
   これは最も注意をしなければいけません。日本の意匠登録は登録が成立しその後登録料を支払うことにより意
  匠の内容が公開されます。しかし、意匠の国際条約は、意匠の審査を行わずに登録を認める欧州諸国の制度が基
  本にあります。この公開は国際登録から原則6か月に行われます。そこで、保護の成立前に意匠が公になること
  避ける必要があるときは、公開の時期を延期する申請を個別に行う必要があります。また、各国の審査はこの公
  開の後に開始されます。そのため、早期に保護を求める場合は国際登録と同時に公開を請求し、保護の早期化を
  図ることも可能です。

  最後に:
   国際条約の利用は経済性を始めとする多くの利点があります。しかし、日本の意匠制度とは異なるため、その
  選択は慎重に行う必要があります。国際条約の利用を検討される際は、日本弁理士会東海支部の相談窓口など専
  門家の支援を事前に受けられることをお勧め致します。

  ※1 https://www3.wipo.int/login/en/hague/index.jsp
  ※2 特許庁出願課 国際意匠・商標出願室 ハーグ担当
     電話:03-3581-1101内線2683番 Fax:03-3580-8033

                                          弁理士 中村 知公

アメリカ特許公報より抜粋 アメリカ特許公報より抜粋

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