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新聞掲載記事

更新:2015/10/30

「音」を商標登録?

 「わらび~もち~」東海エリアにいらっしゃる方は、誰でもこのような「音」をお聞きになったことがあると思い
ます。何の話をしているかと言うと、世間で使われるこのような「音」が商標登録の対象になりましたのでご紹介し
たいと思います。「わらび~もち~」の音が本当に登録できるかは後述するとして、簡単に「音の商標」の保護制度
をご紹介します。

 1.保護対象としての「音」
   「音」といっても様座な音があります。雷の音や水が流れる音などの自然音、緊急車両のサイレン音や電話の
  呼び出し音、楽器によって演奏される音楽、デジタル音、音声。今回の商標法改正では定義規定に「音」が追加
  されたので、これらの音は全て保護対象と言えます。では、音であれば何でも登録が認められるのでしょうか?

 2.商標登録の条件
   音の商標について商標登録を受けるには、従来から保護される文字や記号等と同じく、大きく分けて(ア)他
  人と自己の商品・役務とを区別するための標識として機能するか(商品やサービスの普通名称や説明的な表現に
  あたらないか)、(イ)同一又は類似の商標を他人が先に出願していないか、の条件を満たす必要があります。
   ここで前述の「わらび~もち~」を例にして考えてみます。まず(ア)の条件について。「わらび~もち~」
  の音は、商品「わらび餅」について使用されます。ですので「わらび~もち~」の中の言語的要素“わらびもち”
  は、商品の普通名称です。また、特許庁は、原則としては、言語的要素を伴わない音楽的要素のみからなる音の
  商標は、(ア)の条件を満たさないと考えています。このため、言語的要素と音楽的要素を組み合わせた「わら
  び~もち~」の音全体としては(ア)の条件を満たしません。よって、「わらび~もち~」の音の商標登録は困
  難と考えられます。但し、例外もあります。このような識別力の無い商標が実際に使用された結果、商品・役務
  の識別標識として認識されるようになった場合です。
   次に(イ)の条件について。この条件は、商品や役務の出所混同の防止のために規定されています。したがっ
  て特許庁は、出所混同が生じ得ると考えられる場合は、商標のタイプを越えて類否の判断を行うとしています。
  これを音の商標に関して言うと、例えば、音の商標に含まれる言語的要素と同一又は類似の商標が、「文字」商
  標として先に出願・登録されている場合は、商標登録は認められません(当然に、指定商品・役務も同一又は類
  似の場合です)。

 3.実際に出願された音の商標
   9月15日時点で、音の商標の出願件数は271件です。東海地方に住所がある法人からは、「リンナイ」、
  「スジャータ」、「たかすクリニック」という音など、海外からは「YAHOO」という音やインテル社のCM
  に用いられる音などが出願されています。これらの出願例は、特許庁のホームページで簡単に検索できますので、
  ご興味のある方は調べてみて下さい。なお、9月15日の時点の特許庁データベース上で、商標登録が認められ
  た音はまだ確認できません。

 最後に、「音について商標登録が認められる=(商品や役務について)特定の音を使用することに独占権が発生す
る」ということになります。したがって、音を使用する場合には、他人の商標権を侵害してしまうリスクがあります。
ですので、商標の使用者の立場からすると、今回の商標の保護対象の拡大には、メリット・デメリットの双方があり
ます。
 実際にはどのような場合に商標権の侵害となるのか、音の商標の商標登録出願時の留意点・必要情報などは、紙面
の関係で残念ながら本稿ではご紹介できません。ビジネスでの「音」の利用をご検討される場合には、お近くの弁理
士にご照会をされてはいかがでしょうか。

                                           弁理士 前田 大輔

出典:特許庁発行パンフレット「新しいタイプの商標の保護制度」からの抜粋 出典:特許庁発行パンフレット「新しいタイプの商標の保護制度」からの抜粋