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新聞掲載記事

更新:2016/01/29

特許裁判例を活かした実務~PBPクレームに関して~

   物(生産物=Product)の発明がその物の製造方法(Process)によって特定されている特許請求の範囲(い
  わゆるクレーム)をプロダクト・バイ・プロセス・クレーム(以下、「PBPクレーム」)といいます。例えば、
  「部品Aと部品Bとを組み立てた後、部品Cを取り付けてなる装置」というように、製造に関して経時的な記載
  のあるものや、「射出成形によって形成された特性αのプラスチック部品」というように、製造に関して技術的
  な特徴や条件が付された記載があるものがPBPクレームに該当します。物の発明がPBPクレームで記載され
  ていると、「クレームとは異なる製造方法で製造され、完成状態が同じ製品」が特許発明の技術的範囲に含まれ
  るのか、という疑問が生じます。
   従来、PBPクレームの技術的範囲の解釈については、(1)クレームに記載された製造方法に限定されず、
  その方法で製造された物と同一の物にまで及ぶとする「物同一説」、(2)クレームに記載された製造方法によ
  り製造された物に限定して解釈すべきとする「製法限定説」、の2通りの考え方がありました。
   2015年6月5日、最高裁判所の第二小法廷は、原審である知財高裁の大合議判決(2012年1月27日)
  を破棄し、PBPクレームの解釈に関して以下のような判断を判示しました。
   (1)PBPクレームで記載された発明は、審査・審判における要旨認定、及び、登録後の特許権の効力とも
  に、原則として物同一説に基づいて解釈する。
   (2)PBPクレームは、原則として発明が不明確であり、明確性要件に適合しない。
   (3)出願時において、当該物を構造または特性により直接特定することが不可能であるか、およそ実際的で
  ないという事情が存在する場合に限り、PBPクレームであっても発明が明確であると認められる。
   この判決を受けて、特許庁は、運用基準「PBPクレームに関する当面の審査・審判の取り扱いについて」を
  規定しました。そこで、今後の実務において物の発明を出願する場合に必要となる判断を下図に示します。
   「その物を構造または特性により特定することが①可能か?②実際的か?」という問いかけに対し、①、②共
  にYESの場合、PBPクレームを記載した出願は審査で拒絶されます。一方、①または②の少なくともいずれ
  かがNOの場合、不可能または非実際的事情の存在について明細書に記載すれば、PBPクレームであっても明
  確性要件に適合します。

                              知的財産権制度推進委員会 弁理士 岡田 康一