東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2016/02/29

職務発明制度の見直しについて

平成27年度の特許法改正のうち、「職務発明制度の見直し」を簡単に説明します。
1.職務発明制度とは
   従業員が職務で行った発明につき、企業が「特許を受ける権利」や特許権を取得したとき、従業員が得る権利
  や対価(報酬)の取扱いを定める制度です。
   特許法では、発明をすると、特許庁に特許権の付与を請求できる権利である「特許を受ける権利」が自動的に
  発生すると考えます。今回の改正は、「誰に」この特許を受ける権利が発生するかについて、大きな変更があっ
  た点で重要です。

2.改正後の職務発明制度
(1)従業員の職務発明について、企業に「特許を受ける権利」を取得させることを予め勤務規則等で規定した場合
  には、「特許を受ける権利」の発生時から企業に帰属するとしました(いわゆる「法人帰属」:新設35条3項)。
   但し、勤務規則等を定めない場合、勤務規則で法人帰属を定めない場合には、原則通り、従業員の職務発明の
  「特許を受ける権利」は、発明者本人に発生します(35条1項)。
(2)従業員は、職務発明についての「特許を受ける権利」を企業に取得させた場合に、「相当の金銭その他の経済
  上の利益を受ける権利」(利益請求権)を有することになりました(改正35条4項)。
   企業は、金銭的処遇向上を伴う昇進や昇格、会社負担による留学、ストックオプションの付与等の経済的な利
  益、これらと金銭との組合わせにより、従業員発明者に報いることが可能となります。
   この規定は、法人帰属とした職務発明のみならず、発明者帰属の職務発明にも適用されます。つまり、改正法
  施行後になされた職務発明について企業が「発明を受ける権利」を取得した場合、発明した従業員は、「対価請求
  権」ではなく「利益請求権」を有します。
(3)「相当の金銭その他の経済上の利益」の内容を定めるにあたり、内容決定についての各過程(内容決定の基準
  策定に際して行う労使間協議の過程、基準の開示、発明者への意見聴取)が不合理であってはならないとする規
  定しています(改正35条5項)。
   改正法では、経産大臣(特許庁)が、「相当の金銭その他の経済上の利益」の基準策定に際して行う労使間協議
  等の指針(ガイドライン)を作成・公表します(新設35条6項)。
   現在既に、特許庁HPにガイドライン案が公開されています。

3.その他
(1)新しい職務発明制度の施行日は、平成28年4月1日です。
(2)改正法施行日前になされた職務発明については旧法が適用されますので、今後、長期間にわたり、旧法が適用
  される職務発明と、改正法が適用される職務発明とが、混在します。
(3)法人帰属規定を導入予定の企業や、新たに職務発明の勤務規則の策定する企業などにおいては、ガイドライン
  案を参照し準備することをお勧めします。ご不明な場合、弁理士にご相談下さい。


                               日本弁理士会 特許委員会 弁理士 奥田 誠