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新聞掲載記事

更新:2017/01/31

判例の活用方法について

   発明を特許として認めてもらう為の判断基準や、特許の申請書類(「明細書」といいます。)の書き方の要件
  は、実は不変ではありません。これらは、新技術の動向や経済状況等に柔軟に対応できるよう、時代の変遷に応
  じて変化します。これに対し、特許関連の裁判判決(「判例」といいます。)の傾向は、近時の特許性の判断基
  準や明細書の記載要件を示す指針として、とても参考になります。
   例えば、発明が特許として認められる為には、従来技術と異なるものである必要があるばかりでなく、従来技
  術から容易に成し遂げることができないものであること(「進歩性」といいます。)が要件となります。進歩性
  の要件について、例えば近時の判例のうち、眼鏡レンズ加工装置事件(平成27年(行ケ)第10078号)で
  は、発明によって解決される課題の重要性が指摘されました。つまり、発明がどのような課題を想定したもので
  あり、その課題が発明によってどのように解決されるかを明確にすることが、特許を取得する為に大変重要であ
  ることになります。又、車両用指針装置事件(平成26年(行ケ)第10346号)等を含む複数の判例を見る
  限り、進歩性をクリアするためのハードルは、近年やや低くなっているように思います。
   又、例えば、明細書の記載要件に関する近時の判例である、プラバスタチンナトリウム事件(平成24年(受)
  第1204号)は、実務に多大な影響を及ぼしています。この事件は、明細書において発明を特定する為の記載
  として従来認められていた「プロダクトバイプロセスクレーム」(以下「PBPクレーム」といいます。)につ
  いて、特別な事情のない限り、明確性の点で問題があり無効であると判示するものでした。ここでPBPクレー
  ムとは、例えば「製造方法Aにより製造された化合物B」のように、製造方法によって生産物を特定しようとす
  る記載がある請求項(発明を特定するための事項の記載)のことをいいます。この判例は、今後の出願や審査中
  の出願だけでなく、既に特許として認められているものに対しても有効となります。当面、PBPクレームを記
  載して出願することは控えた方がよいでしょう。
   特許を取得しようとする場合、これらの傾向を知っていれば十分取得できたはずの特許が、拒絶されてしまう
  可能性もあるわけです。従って、これから特許を取得しようと思っている方は、近時の判例に基づいて傾向をき
  ちんと把握し、これを踏まえた適切な戦略に則って明細書を作成し出願することが、とても大切だと思います
  (但、初心者の方にとってはとても難しい作業になると思いますので、詳しくは、知的財産の専門家(弁理士等)
  に問い合わせてみるのが良いと思います。)。

                                           弁理士 稲山 朋宏