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新聞掲載記事

更新:2005/02/28

新米弁理士のひとりごと

 化学メーカーの研究職を経て、ひょんなことから特許事務所に勤めることになった。主な業務は特許出願書類(明細書等)の原稿作成である。
 転職後しばらくすると、自分の体重が徐々にではあるが着実に増え続けていることに気づいた。あちこちの実験室を行き来していた研究職時代に比べて運動量が減ったのが一因だろうと思い、試しに万歩計をつけて生活してみて驚いた。
 勤務時間中の総歩数よりも在宅中の総歩数のほうが断然多かったのだ。別に私が大邸宅に住んでいたわけではない。なにしろ職場にいる間はほとんどパソコンの前に座ったまま、動かしているのは首から上と手首から先だけ。そんな勤務実態からすれば、ぐうたら主婦の私がそれなりに家事をこなすため家の中を動き回る歩数のほうがまだしも多かったというだけの話だ。

 原因がわかったからには積極的に体を動かして体重(体型?)の維持を図るべきなのだろうが、運動嫌いの私は結局「食事の量を減らす」という消極的かつ安直な解決策に走っている。これでは体重は維持できても運動不足は解消されない。案の定、筋力が落ちてきた。最近ではペットボトルの蓋が開けられなくて困ることがある。かつては力自慢とは言えないまでも、有機溶剤の入った18リットル缶を階段で四階まで運び上げるぐらいは平気だったのに。
 私に限らず、明細書等の作成を主な業務とする特許事務所員の多くは勤務時間の大部分をパソコンの前で過ごしているのではないかと推察する。よく耳にする症状は運動不足、視力の低下、腰痛である。幸い私はこれまで腰痛になったことはないが、今後も見舞われないという保証はない。それどころか、このまま運動不足の状態が続くと骨粗鬆症にもなりかねない。やはりもう少し運動するように心掛けたほうがよいのだろうか。しかしスポーツジムに通うには時間もお金もかかる。このところの世相では帰宅後に一人で散歩やジョギングに行くのも物騒である。そもそも私は運動すること自体を目的として運動することが嫌いなのだ。できれば転職前のように、日常の業務に打ち込んでいれば自然と体を動かすことにもなる、という虫のいい解決策が望ましい。

 以前、スポーツジムに通う友人から、そのジムのエアロバイクにはTVが付属していると聞いたことがある。漕いでいる間にお客様が退屈しないようにとの配慮らしい。TVの電源はエアロバイクとは独立だったようだが、「もしエアロバイクを漕ぐことでTVに電力を供給しているんだったら、ドラマの肝心なシーンの前とか無理しても頑張っちゃうよねー。」と言って二人で笑ったものだ。
 そこで、どうせ一日中パソコンに向かっているのだから、足漕ぎ式の発電機からパソコンに電力が供給されるようにしてはどうだろうか。漕ぐのを止めたら苦心して捻りだした文章が消えてしまう。怠け者の私でも必死で足を動かし続けるに違いない。電気代が節約できて事務所もハッピー。冬場の暖房も不要。むしろ冬でも冷房が必要になるかもしれないが。
 あるいは、巨大なシート状のキーボードを床に置き、該当するキーを次々と踏んで入力する。踏んだキーによって異なる音が鳴るようにすれば、誤入力の確認が容易になるし、入力の楽しさも増す。踊る弁理士。反射神経やバランス感覚も養われる。運動量は減るが、同様の巨大キーボードを壁に貼って掌でキーを叩いてもよい。
 しかし、日頃から集中力と注意力を振り絞って明細書を作成しているのだ。首から上と手首から先のことだけで精一杯。他の筋肉や姿勢の制御に注意力を割く余裕などあるはずもない。お客様に「足が遅くて納期が遅れましたっ。」と言い訳するわけにもいくまい。そうなると、ひとつ先のバス停まで歩く、エレベータを使わず階段を登る等の、従来から周知慣用の対策が妥当な選択ということになりそうである。やれやれ、地味で面白みのない結論になってしまった。

 

弁理士 大井 道子