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新聞掲載記事

更新:2017/10/31

中小企業における知財管理~必要な知財マインド~

 先年、トヨタ自動車さんが燃料電池関連の特許(約5700件)を無償開放する-所謂オープン戦略を採ることが
話題になりました。1社だけでは、燃料電池自動車(FCV)の普及は困難であることを見据えた高等な知財戦略で
す。
 しかし、オープン戦略とクローズ戦略(1社独占にて市場の寡占化を図る)は、何も大企業だけの話ではありませ
ん。どのような中小企業にもついて回る問題です。
 ご存じの通り、特許権は、発明を世間に教える代わりに、一定期間与えられる独占権です。通常は、社員が画期的
な発明をしたら直ぐに「特許出願しろ」となります。
 しかし、発明の性質によっては、他社に発明の内容を教えるだけの比重が高く、侵害者に対し「止めてください」
と言いにくいものもあります。例えば、トンネルの掘削方法、熱処理方法、穴空け方法などに関する発明です。それ
故、発明や考案が提案された場合、特許や実用新案出願をして「教える代償に有期限の独占権を得る(オープン)」
か、あるいは、「ノウハウとして社内で厳重に秘密管理を行う(クローズ)」かの「仕分け」判断が極めて重要にな
ります。ノウハウの管理は、何も難しいことではありません。
 提案された発明等を客観的に検討し、「社内で秘密管理して保存した方が、特許出願するよりも当社の収益に寄与
しそうだ」と判断した場合、「技術的に有効である」、「これまで知られていなかった」、「秘密情報として管理す
る」との3要件を備えればOKです。ですから、特許にするかノウハウにするか、仕分けする能力が必要です。
 上記「秘密情報の管理」方法には、例えば、ノウハウを纏めたプリントを金庫に保管するか、あるいは、パスワー
ド付きのファイルにしてパソコンで保存する等がございます。また、ノウハウの発案者に対しては、特許出願に伴う
補償金制度とバランスを採られることをお奨めします。かかる人財は、貴社にとって大切なお宝ですので。
 更に、1つの発明について特許出願する場合でも、全ての技術を出願書類に記載せず、「おいしいところ」はボカ
しておき、ライセンスをする際に、初めて相手方に教える手もございます。例えば、第1の効果を得るには、A成分
1~10%と特許中で記載し、且つ第2の効果を定性的にのみ記載しておき、第1と第2の効果の双方を得るには、
A成分は3~6%であることをノウハウとして開示する方法もございます。
 技術に関する知財管理は、特許出願する(オープン化)か、ノウハウにする(クローズ化)かの仕分けが重要です。
また、この仕分ける基準は、市場の動向や技術の変化等に応じて、適宜見直すことも大切です。

                                            弁理士 鈴木 学