東海支部の活動について

新聞掲載記事

更新:2005/03/29

世界遺産と団体商標

 昨年の7月、この地方のある地域が世界遺産に登録されました。それまでは無名だった地名も、連日ニュース等で報道されることにより、すっかり全国的に周知となりました。団結力の強まった地元の人々は、これを機に地域振興、地域の活性化を目指して、連携して業務を行おうと決議しました。そこで考えだされたのが、地元商工会議所名義で商標を登録しようということでした。しかも、商工会議所の会員が共通して使えるようにしたいと思いました。早速、特許事務所に商工会議所名義で団体商標を登録したいという相談がありました。商標は地名と商品の普通名称を組み合わせたものでした。

 ここで、商標法的に問題となるのは2つの点です。第1は、商工会議所名義で団体商標の登録ができるかどうかです。団体商標とは、団体に属する構成員が共通の商標を使用することにより、一定の品質・出所を表示するものです。例えば、長野の信州味噌、仙台の笹かまぼこ、京都の西陣織などが挙げられます。団体商標は構成員が使用するものであるので、出願人は同業者からなる構成員を有する所定の団体でなければなりません。しかし、商工会議所の場合、通常は異業種の会員からなるのが一般的です。従って、商工会議所名義で団体商標を登録するのは困難です。
 第2は、地域名に商品名が加えられた商標が登録となるかどうかです。通常、このような商標は、自他商品の識別標識としての機能を有しないとして、登録とはなりません。登録となるのは、使用により周知性を獲得した場合のみです。近年、地域が一体となって共通した統一的なブランドを用いて、その地域特定の商品の生産等を行う取り組みが盛んですが、使用されている大部分の地域ブランドは、このような地名と商品名等を組み合わせたものです。
 諸外国においては、産地表示のみからなる商標であっても、団体に属する構成員の商品について使用するために登録が認められる制度が設けられています。我が国においても、地域ブランドとして使用したいというニーズの高いこのような商標の登録を可能とする制度の整備が現在進められているところです。具体的には、地域団体商標制度のような制度を設けることが検討されています。商標登録を通じて地域が一体となり、地域が活性化し、各地に個性ある独自ブランドが見られるようになる日も近いのではないでしょうか。

弁理士 矢代 加奈子