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新聞掲載記事

更新:2005/04/29

不正競争防止法によるデザインやトレードマークの保護

1.登録を要件としない保護
 自社の商品デザインやトレードマーク(商標)を模倣した商品が市場に出回っているのを発見したとき、そのような模倣品を排除して自社の財産・権利を守らねばなりません。
 このようなときに、そのデザインについては意匠登録をしており、或いはトレードマークについては商標登録をしているならば、当該登録によって発生する意匠権や商標権(即ち産業財産権)に基づいて、模倣者に対して模倣品の製造や販売の差し止めを求めたり或いは自社の被った損害の賠償を請求したりすることが可能です。
 しかしながら、模倣されている自己のデザインやトレードマークについて産業財産権(工業所有権)に関する登録を何ら行っていない場合はどうでしょうか。他人の模倣に対して何の対策もとれないのでしょうか。

 このような場合に救世主となり得る法律が、不正競争防止法(以下「不競法」という。)です。不競法は、事業者間の公正な競争による国民経済の健全な発展を図ることを法目的としております(不競法1条)。そして、不競法上の保護を受けるために、特許法、意匠法、商標法に規定されるような登録行為(設権行為)は必要ありません。商品デザインの模倣等、現実に行われている一定のアンフェアな行為(不正競争)を規制するための法律だからです。

2.不正競争の類型(不競法2条1項各号)
 そうはいっても、当事者の主観的な判断に頼って何でもかんでもアンフェアだ不正競争だと規制することは却って競業秩序を乱し、市場の混乱を招きかねません。そこで不競法では規制の対象とされる不正競争を明確にすべく2条1項各号に不正競争行為が限定列挙されております。表1は法に規定される不正競争の類型をまとめたものです。
 不競法の保護を受けるためには、規制したい不正行為が法律に規定される不正競争の類型のいずれかに該当することを主張立証しなければなりません。冒頭に記した商品デザインやトレードマークの模倣行為は、不競法2条1項1号~3号に規定される(1)周知表示混同惹起行為、(2)著名表示冒用行為、および(3)商品形態模倣行為のいずれかに該当することが考えられますので、かかる模倣行為を禁止するためには、当該行為が不競法2条1項1号~3号のいずれかに規定される不正行為であることを主張立証しなければなりません。
 従って、不競法によって自己のデザインやトレードマークを保護するためには、先ず、不競法に規定(限定列挙)される不正競争行為の内容およびその成立要件を正しく把握することが必要です。

表1:不正競争の類型
不正競争の類型 不競法
2条1項各号
他人が努力して作り上げた成果に関する不正行為
(1)周知表示混同惹起行為     1号
(2)著名表示冒用行為         2号
(3)商品形態模倣行為         3号
営業秘密に関する不正行為
(営業秘密の不正取得、不正開示等) 4~9号
プログラム等の技術的制限手段に対する不正行為
(「プロテクト外し」の販売等)    10、11号
ドメインネームに関する不正行為
(ドメインネームの不正取得、不正使用等) 12号
誤認惹起行為
(原産地、品質等を誤認させる表示等)  13号
競業者の営業誹謗行為
(営業上の信用を害する虚偽事実の流布等) 14号
代理人等の商標冒用行為        15号

3.周知表示混同惹起行為(不競法2条1項1号)
 周知表示混同惹起行為とは、「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線(典型的にはインターネット)を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」をいいます。ここで「商品等表示」とは、人(法人、社団を含む)の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいいます。
 この行為に該当させるためには、模倣されている商品等表示が少なくとも特定の地方(例えば名古屋地区)において周知であることが必要です。また、同一若しくは類似の商品等表示が使用された(即ち模倣された)結果、模倣された者の商品又は営業と模倣した者の商品又は営業との間に混同を生じる又はその虞があることが必要です。

4.著名表示冒用行為(不競法2条1項2号)
 著名表示冒用行為とは、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為」をいいます。前記周知表示混同惹起行為との大きな相違点は、模倣されている商品等表示が単なる周知では足らず著名であることが必要な点です。但し、周知表示混同惹起行為とは異なり、例えば全国的に著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用していれば、混同の虞があろうとなかろうと著名表示冒用行為に該当します。

5.商品形態模倣行為(不競法2条1項3号)
 商品形態模倣行為とは、「他人の商品(最初に販売された日から起算して3年を経過したものを除く)の形態(当該他人の商品と同種の商品(同種の商品がない場合にあっては当該他人の商品とその機能および効用が同一又は類似の商品)が通常有する形態を除く)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入する行為」をいいます。いわゆるデッドコピー商品の販売等がこの行為に該当します。デッドコピー品の流通の規制を目的とするため、前記二つの不正行為とは異なり、商品形態に関する周知性、著名性は要件ではありません。
 但し時期的な制限があり、最初の販売日から起算して3年経過後はもはや商品形態模倣行為に該当しないことに留意する必要があります(現在進められている法改正によりこの時期的制限は撤廃される予定です。)。また、「他人の商品の形態を模倣した」とは、模倣の意図があったこと即ち他人の商品にアクセスして(基づいて)いること、そして模倣の結果の商品形態が他人の商品の形態と実質的に同一であること、をいうと解されております。従って、商品形態が同一であっても独自に創出されたものであれば「模倣」に該当しません。また、他人の商品の形態を模倣したとしても当該他人の商品と同種の商品が通常有する形態の模倣は、不正競争行為を構成しません。そのような形態は、同種の商品を製造・販売する何人も利用し、特定の者に独占的に利用されるべきものではないからです。

6.法上の効果
 周知表示混同惹起行為、著名表示冒用行為又は商品形態模倣行為に該当すれば、かかる不正行為を行った者は、差止請求(不競法3条)、損害賠償請求(不競法4条、民法709条)等の対象となり、民事上の救済が図られます。
 また、不正の目的をもって周知表示混同惹起行為を行った者は刑事罰の対象となります(不競法14条)。現行法では著名表示冒用行為および商品形態模倣行為は刑事罰の対象となりませんが、これら不正行為に対しても刑事罰を導入するべく法改正の準備が進められています。なお、法改正の詳しい内容は、経済産業省のウェブサイト(平成17年2月8日付け報道発表)をご覧下さい。

弁理士 安部 誠