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新聞掲載記事

更新:2004/02/21

警告状が来たらどうするか

 ある新製品の開発と販売、特許出願に熱心なA会社のB社長が、C特許事務所へ駆け込んできました。D弁理士に会うなり直ぐに、

B社長「先生、困ったことになりました。相談に乗ってください。」

D弁理士「いきなりどうしました。B社長」

B社長「実は、こんな手紙がいきなり届いたのでびっくりして、飛んできたのです。特許の問題なので先生にご相談に来たのです。」

D弁理士「ではまず、その手紙を見ましょう。・・・」「なになに・・・『貴社の製品Eは、当社の所有する特許権X(特許第0000号)の技術的範囲に含まれると思料いたします。貴社の製品Eの販売を中止し、今までの販売数量及び販売金額をご連絡いただくよう通知いたします。本件につきまして貴社のご見解及び対応を至急ご連絡ください。Y株式会社 代表取締役Z』と書いてありますね。」

B社長「先生どうすればいいんでしょうね。製品Eはうちにとっても大切な商品ですし。それに、本当に製品Eの販売を中止しないといけないのですか。また、販売数量及び販売金額を言わないといけないのですか。」

D弁理士「まあ、B社長、落ち着いてください。最近、このような特許権の問題は増えてきたように思います。仮に、相手の言っていることが全て正しければ製品Eの販売を中止し、今までに販売した分について損害賠償を支払う場合も出てきますが、その前に事実関係をきちんと確認する必要があります。まだ相手の主張が全て正しいとは決まったわけではありません。手順を追って、対応を考えていきましょう。
 このような場合に、対応は大きく分けてまず2つに分けられます。1つは、特許権Xに対するものと、製品Eに対するものです。」

B社長「それではどうするのですか」

D弁理士「今から詳しく説明しますが、とりあえず相手には、『手紙を受け取った、検討するので1ヶ月後に返事をする』旨の回答書を出しておいた方がいいと思います。こちらの誠意を見せ、検討時間を確保するためです。」

D弁理士「まず、このような警告状が来たということは、会社にとって危機管理の1つです。すぐに相談にきていただいて、対応がとりやすいですね。すぐ専門家(弁理士)に相談することは、きわめて大切です。
 まず、製品Eの対応ですが、この製品Eの売り上げ、利益額をこの特許権の成立の日から遡って調査してください。これにより、製品Eの売り上げ、利益額が無くなった場合を想定して危機の大きさを理解していただきたいと思います。
 次に、製品Eに類似する製品がないかその売上額と利益額を含め調査してください。類似製品を含め、特許に含まれるかどうかの検討は後で説明します。相手は、製品Eだけを指摘していますが、こちらの対応は、全てを考える必要があります。」

B社長「全ての問題をテーブルに上げて検討するのですね。」

D弁理士「そうです。更に、相手を知ることも大切です。Y株式会社を知っていますか。」

B社長「知っています。うちの競合先です。合理的に話のできる会社です。」

D弁理士「相手が合理的なことは大切ですね。この警告状の狙いを考えておいてください。つまり、製品Eの販売を止めたいにか、販売は認めるが特許料が欲しいのか、あるいは御社の特許権とクロスライセンスをしたいのか等です。これは今後の対応を考える上で大切なことになります。また、B社長の保有する特許で、Y株式会社の製品をカバーするものがないかも調べてください。カバーするかどうかは、ご相談に乗ります。交渉の武器になります。」

B社長「早速調べてみます。途中段階でも、いつでも相談に乗ってください。」

D弁理士「いつでも相談下さい。さらに、製品Eについて、特許権に含まれるかどうかの検討は後に説明しますが、特許権Xを回避する設計変更できる可能性も検討ください。特許権Xを回避している設計かどうかは相談しましょう。」

D弁理士「次に特許権Xについての検討の説明をしましょう。」

B社長「それで、具体的にどうするのですか。」

D弁理士「まず、相手の言っていることを確認します。相手は『貴社の製品Eは、当社の所有する特許権X(特許第0000号)の技術的範囲に含まれると思料いたします。』といっています。まず、特許権Xの確認をします。」

B社長「特許権の確認なんて必要ですか」

D弁理士「特許権は、他人に売ることもできるし、毎年、特許権を維持するために年金を支払う必要があります。支払わないと権利は消滅します。年金を支払わずに消滅する特許権も多くありますよ。いずれにしても、特許庁で確認して、特許権が本当に存続しているか、特許権の所有者はY株式会社であるかを確認します。これは、私が確認しましょうか。」

B社長「お願いします。」

D弁理士「次に大切なことは、製品Eが特許権X(特許第0000号)の技術的範囲に含まれる(以下簡単に「特許権に含まれる」と言います)かどうかです。」

B社長「特許権を持っている相手がそのように言っていますが。」

D弁理士「特許権に含まれるかどうかは、簡単な話ではありません。相手の主張は確認が必要です。製品Eが特許権X(特許第0000号)に含まれるかどうかについては、大変多くのことを検討する必要があります。私ども、弁理士が専門的知識を使って、ご相談に応じることができる重要なポイントです。
 まず、特許権の内容を確認します。それには、特許権Xの特許公報と特許庁における審査経過書類のコピーを取り寄せ、中味を充分検討します。さらに、特許権Xが出願された日の以前の技術資料(先行技術)を調査します。この先行技術は、特許権Xの権利の範囲を確認する上で重要な判断材料になります。また、特許権の有効性の判断にも重要です。」

B社長「特許権の有効性といっても、もうこの特許は特許庁で有効と判断されているのではないですか。」

D弁理士「特許庁の審査官は、大変多くの件数を審査しています。したがって、あらゆる技術文献を調査することは不可能であり、一定限度の資料の調査で判断せざるを得ません。そのため、一旦特許になっても、先行技術が見つかると、この無効を主張することができるのです。このような、警告状が着たからには、もっと広範囲に先行技術を調査し、可能な場合は、この特許を無効にすることも対応の1つなのです。」

B社長「それで特許を無効にできなくて、特許権に含まれることになった場合はどうなるんです。」

D弁理士「その場合の対応は次の3つです。
(1)製品Eの販売を中止して、今まで販売した分の損害賠償を支払う。
(2)Y株式会社と交渉して特許権の実施権の許諾を受ける。この場合は、もちろん相手の同意(有料又は他の条件)が必要です。
(3)製品Eの設計変更をして、特許権Xに含まれない製品を販売する。過去の販売分の損害賠償は支払う。

B社長「どれもいやだったらどうします。」

D弁理士「そのままほって置いたら、相手の出方次第ですね。しかし、最悪は、裁判を覚悟する必要がありますね。」

B社長「その裁判の場合には、先生はどのように助けてくれますか。」

D弁理士「裁判の場合は、弁護士の先生と協力して、B社長のお役に立つことができます。侵害訴訟代理を認められた弁理士は、特許侵害事件において、弁護士と共同して代理人として裁判を行うことができるようになりました。しかし、話し合いで解決することが一番大切なことだと思います。話し合いの結果、相手と契約する場合も、交渉、契約書作成等をいたしましょう。
 いずれにしても、今後密接に連絡を取り対応していきましょう。」

B社長「よろしくお願いします。」

弁理士 糟谷 敬彦