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新聞掲載記事

更新:2006/05/05

商標権の更新・書換と新出願について

 数多くの商品を扱う会社のQ部長が商標相談会に訪れ、A弁理士が応対する。

Q 商標制度についても、他の知的財産の制度と同様に、ひんぱんに法改正等が行われていますね。
A そうですね。例えば、これ自体はやや古い話ではありますが、商標権についての書換というものがあります。すなわち、商品の区分については、現在の区分(平成3年法)以前の区分として、明治32年法・明治42年法・大正10年法・昭和34年法の4つの区分があり、これらの区分で登録を受けた商標権については、平成10年~12年から、順次、更新登録申請に併せて、現在の区分に書き換える書換登録申請をすることになっています。

Q そうでしたね。当社も昭和34年法等の旧区分で登録を受けた商標権を数多く持っており、更新登録申請の際ごとに書換登録申請をしています。これで完璧ですよね。
A ちょっと待って下さい。法律上は完璧かもしれませんが、まだ考慮すべきことがありますよ。そして、それは、今後において重要になってくることなのです。というのは、このままでは、その多くの商標権を今後も長く維持していくにあたって、大きな経費がかかってしまうかもしれないのです。その経費を軽減することが可能な場合が多いのですよ。

Q そのようなことがあるのですか?詳しく教えて下さい。
A はい。例えば、貴社が、同一の商標について、旧区分の第1類、第2類及び第3類の計3区分にそれぞれ商標権(計3件)を持っているとしましょう。そして、その旧第1類の商標権を更新するとともに書き換えた結果、現在の区分で第11類、第12類及び第13類(指定商品:a)の3区分になったとしましょう(なお、この新旧区分の対応関係は、わかりやすさのための、現実とは相違する架空のものです。以下同様)。同様に、旧第2類の商標権は、第12類、第13類(指定商品:b)及び第14類の3区分になり、旧第3類の商標権は、第13類(指定商品:c)、第14類及び第15類の3区分になったとしましょう。
 今回の更新登録申請の際に、どれだけの印紙代が必要でしたか?

Q 今回の印紙代は3区分の料金でした。
A そうですね。では、次回の更新登録申請の際の印紙代はどうなると思いますか?

Q 次回といえば10年後ですね。やはり3区分の料金でしょうか?
A いいえ、更新登録申請の際の印紙代は区分数によります。次回の更新登録申請の際には、各商標権ごとに3区分ありますので、合計9区分となり、9区分の料金の印紙が必要となります。

Q 今回と比べてかなりのアップになりますね。どうしてでしょう?
A それは、1つの商標について、同一の区分において、複数の商標権が併存しているからです。すなわち、第12類~第14類の指定商品については、複数の商標権で一部ずつカバーしているからです。例えば、第13類については、本来であれば、1つの商標権でa、b及びcの指定商品をすべてカバーできるのですが、今回の場合は、3つの商標権でそれぞれをカバーしているからです。このため、第11類~第15類の5つの区分をカバーするために、9区分の料金が必要となってしまうからです。

Q なるほど。それを安くすることができるのですか?
A はい。第12類、第13類及び第14類について新たな出願をする場合を考えましょう。現在では多区分にわたる出願が可能ですので、その3区分が1つの出願に含まれるようにしてもよいし、区分ごとに3出願してもよいです。なお、その際、例えば第13類については、a、b及びcの指定商品をすべて1つの出願に記載するのはもちろんのことです。そして、旧区分の各商標権におけるその3区分の部分については、次回の更新登録申請の際等において削除することとしましょう。
 そうすると、将来的に、更新登録申請をする際の印紙代はどうなると思いますか?

Q 第11類~第15類の5区分の料金の印紙で済むのでしょうか?
A そのとおりです。9区分の料金の場合と比べてだいぶ安くなりますよね。ですから、旧区分で登録を受けた商標権については、新出願も併せて行って、その新出願による商標権に部分的にでも移行した方が良い場合があるのです。

Q そうですか。では早速そのような状態のものがあるか確認しようと思います。そして、新出願も考慮しようと思います。
A ただ、その際にも注意することがあるのですよ。旧区分の時代と現在とでは、商標の類似や識別力について、特許庁の考え方が異なる場合もあります。このため、新出願のみに頼るようにすると、その新出願が拒絶されて商標の登録を全く失ってしまうこともあり得ます。それは絶対に避けるべきです。
 また、旧区分の商標権における一部の区分の削除等と新出願とのタイミングを誤ると、商標権による保護に空白期間が生ずるということもあり得ますが、それも当然避けるべきです。それだけではなく、新出願の商標が登録されても、その登録から5年間は、その5年経過後よりも、第三者から商標登録無効審判を請求される可能性が高いのです。ですから、ほぼ同一の内容の新旧の商標権は、できれば5年間は重複して存在するようにした方がより確実になると思います。
 一方、長期的に保有しない商標の場合は新出願をするとかえって割高になる場合もあります。また、その他、新出願にあたって注意すべき点もあります。

Q なかなか奥が深いですね。
A そう思います。でも、書換登録申請がほぼ一段落しつつある現在、新出願について検討するのに良い時期かと思います。


弁理士 長谷川 哲哉