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新聞掲載記事

更新:2006/06/05

特許出願に係る発明の早期権利化を可能にする「早期審査制度」

 大企業は、5年後、10年後に製造販売する製品を見据えて、技術開発します。しかし、中小企業の場合、技術開発と製造販売とを並行して行うことが多いです。しかも、中小企業の製品は、ライフサイクルが短く、流行に左右されやすい傾向があります。そのため、中小企業においては、自社製品と他社製品との差別化を図って事業を有利に展開したり、特許権の実施料を得て利潤を出すために、特許出願に係る発明について独占排他権たる特許権(特68条本文)を早期に取得する必要性が、大企業より高いと言えるでしょう。

 特許出願に係る発明の早期権利化を図る手段の一つとして、「早期審査制度」があります。通常の審査手続きにおいては、出願審査請求(出願から3年以内の任意の日に請求可能)がなされた順に特許出願を審査します。しかし、「早期審査制度」を利用すると、他の出願に優先して審査を受けることができます。そのため、早期審査制度を利用すると、出願審査請求後、審査官による審査結果の最初の通知が発送されるまでの期間(以下「ファーストアクション期間」という。)を短縮し、最終的に権利取得に要する期間を短くできます。

 具体的には、2004年度は、早期審査制度を利用しない場合(通常の審査手続きを踏む場合)のファーストアクション期間が平均26ヶ月であったのに対して、早期審査制度を利用した場合のファーストアクション期間が平均2.6ヶ月でした(特許庁HP出願等統計「主要統計 審査・審判の審査・審理期間」・「早期審査・早期審理」参照)。

 従って、早期審査制度を利用した特許出願は、早期審査制度を利用しない場合と比べてファーストアクション期間が23ヶ月も短くなり、その分、特許出願から特許権発生(特許権設定登録)までに要する期間が短くなります。例えば、出願と同時に又は出願後まもなく出願審査請求と早期審査の手続きをし、ファーストアクションで特許査定されれば、その後の特許料の納付手続きを含めても、出願から1年以内に特許権を得ることが可能です。

 早期審査の対象となる特許出願は、図1に示すように、(1)出願審査請求をなされていること、(2)1.~4.の何れか一つの条件を満たすこと(1.出願人又はそれらの実施許諾を受けた者がその発明を実施しているもの、2.日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している特許出願、又は国際特許出願している特許出願であるもの(外国関連出願)、3.出願人が大学、短期大学、公的研究機関、承認もしくは認定を受けて技術移転機関(承認TLO又は認定TLO)であるもの、4.出願人が中小企業又は個人であるもの)、が必要です。尚、ここでいう中小企業の判断基準は図2に示す通りです。

 これらの要件を満たす場合、特許出願人は、早期審査に関する事情説明書を特許出願ごとに1通作成し、オンライン・持参・郵送の何れかで特許庁に提出します。早期審査に関する事情説明書には、先行技術文献の調査結果や当該発明が特許性を有する理由、早期審査の対象となる事情等を記載します。つまり、審査官が審査で行う手続を特許出願人が代行し、そこで得た情報を早期審査に関する事情説明書を通じて審査官に提供します。尚、早期審査に関する事情説明書の提出に関しては、特許庁へ支払う手数料が無料です。

 特許庁は、出願審査請求をなされた特許出願について担当審査官を決めます。早期審査請求をした特許出願については、担当審査官が決まった頃(出願審査請求と同時に早期審査の申出手続をした場合には出願審査請求後1ヶ月経過した頃)に担当審査官を特許庁に問い合わせ、担当審査官に面接審査を申し入れるとよいでしょう。技術内容や技術動向を担当審査官に直接説明することにより、担当審査官と円滑な意思疎通を図り、迅速且つ適切な権利取得が可能となるからです。

弁理士 村瀬 晃代