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特許紛争物語~おにぎりパック事件第1話「弁理士に相談!」~/教育機関支援機構 弁理士 瀧川 彰人

  • 特許(発明)
  • 契約/紛争

 これは、新しい「おにぎりパック」を開発した二人の発明者による争いの物語である。
 一方の発明者・近藤パリ子は、大手電機メーカーに勤めるエンジニアである。趣味は、ちょっとした発明品を作ること。ある日の昼休み、ひとり公園で自作の弁当を食べていたパリ子は、湿気で柔らかくなった海苔を見ながら、「おにぎりの海苔はパリパリのほうがいいのに」とつぶやいた。「あ、これは発明になるかも!」パリ子は、試行錯誤の末、おにぎりの海苔を入れる「おにぎりパック」を完成させた。パリ子は、さっそくネットで探した同年代の弁理士に相談した。
 パリ子「この透明フィルムの中に海苔を入れておき、これでおにぎりを包みます。食べる時には、包んだままフィルムのまん中にあるミシン目で、フィルムを裂いて、片側のフィルムを剥がすことで、自動的におにぎりに海苔が巻かれます(参考図参照)。」
 土方トシオ弁理士「なるほど、これは面白いアイデアですね。こういうものなら、特許を出願して、特許権を取得するのがよいと思います。発明のポイントは、フィルムの中央にミシン目があることですね。特許権は、特許請求の範囲の文章が重要ですから。」
 パリ子は、「文章が重要」のくだりはスルーし、特許出願を依頼し、2年後、特許権を取得した。これを機に、パリ子は、思い切って会社を辞め、おにぎりパックを製造販売する会社を立ち上げ、その販売を開始した。
 売れ行きは順調だったが、数か月後、パリ子は思わぬトラブルに巻き込まれた。

 パリ子「もしもし!土方先生?大変です!私のおにぎりパックにそっくりなものが販売されています。これは特許権の侵害ですよね!」

 土方「ちょっとパリ子さん落ち着いて、状況を教えてください。」

 パリ子は、自分の商品の類似品が売られていることと、類似品の製造販売者が芹沢おにぎり商事であることを伝えつつ、半ば強引に土方を連れて類似品の売り場にやって来た。「どうも、私が、ここの社長の芹沢ノリオです。」「芹沢さん、これは私のおにぎりパックと同じです。これは私の特許権の侵害ですよ!すぐに販売をやめてください!」パリ子はもらった名刺をその場に捨てて叫んだ。芹沢「なにするんや!」土方「ちょっと待ってくださいパリ子さん!商品同士で比べてもダメです。特許請求の範囲の文章と相手の商品とを比べないと!」周りの注目を浴びる中、土方がふたりの間に割って入った。つづく【この物語はフィクションです】

参考図:中央にミシン目があるパリ子のおにぎりパック
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