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デザイン保護の横綱「意匠法」が変わります!/弁理士 中村 知公

新聞掲載記事
  • 意匠(デザイン)

1.「デザイン経営」
 企業経営の中枢に「デザイン開発」を位置づけ、企業の成長に活かして行く経営思想です。この「デザイン経営」を推進する施策として「意匠法」が新しくなります。新意匠法は、意匠登録を気に留めることのなかった業界・業種の企業にも意匠登録の可能性を広げます。新意匠法は来年春ごろ施行の予定です。新意匠法を知らないため、ユニークなデザインの登録機会を失うことのないようポイントだけでも把握しておきましょう。新意匠法が新たに登録対象としたデザインは図表の通りです。新意匠法が新たに登録対象としたポイントを解説します。

2.新たに保護対象となるデザイン
(1)クラウドやネットワーク上の画像デザイン
 現在の意匠法は、例えばスマートフォンの画面に表示される歩数計の画像デザインを「スマートフォンの部分的」なデザインとして意匠登録を認めます。一方、新意匠法は「歩数計」の機能を発揮する画像のデザインをスマートフォンの一部としてではなく、純粋な「歩数計」の画像として、スマートフォンという「物から切り離した」画像そのものを登録します。ネットワーク上のサーバーに接続後歩数記録をそのサーバーに日々蓄積し、これまでの平均歩数や換算距離を自動計算するクラウドサービスを利用するときに使用する画像デザインが新たに登録の対象となります。なお、スクリーンセーバーやコンピューターゲームの遊戯画像などは、新意匠法は保護対象から除外しています。
(2)「物」以外に表示される画像デザイン
 例えば、腕輪状の血圧・体温・心拍数の複合機能測定器があるとします。測定結果は腕輪状の測定器ではなく腕輪を巻いた腕の表面に表示する機能を有する場合、新意匠法は腕の表面に表れる測定結果の表示デザインを登録対象とします。現在の意匠法は、このような表示デザインが「物」から離れた場所に表示されるデザインであるため、意匠登録を認めておりません。
(3)建築物の外観デザイン
 現在の意匠法は、プレハブ住宅などを同じ形態の製品を量産可能であることを理由に外観の意匠登録を認めております。一方、顧客の注文に応じて一品しか建築しない注文住宅や特徴的な外観を持つ飲食店の外観なども不動産であることを理由に、意匠登録を認めておりません。新意匠法は、このような不動産に分類される「建築物」を意匠の定義に含め登録対象にしております。
(4)建物の内装デザイン
 アパレル専門店・フランチャイズの飲食チェーン・携帯電話ショップなどの内装は、訪問者が心地よくゆったりと買い物、飲食並びに契約手続ができるよう陳列棚、椅子、商談用机、フローリング等店舗の内装を構成する什器・家具等のインテリアにデザインの統一感を持たせています。また、その内装が醸し出す雰囲気・環境を複数の店舗等で継続的に使用することにより、事業主体のブランド的な機能を発揮することがあります。新意匠法は全体として統一感があることを条件に、複数製品の混在がある内装環境を一つのデザインと扱い意匠登録を認めます。
(5)改良デザインの追加出願
 基本デザインを意匠出願し登録したものの、販売品のデザインが基本デザインと異なること(改良デザインであること)があります。現在の意匠法は基本デザインの登録公報発行前であれば改良デザインの出願が可能でした(このような改良デザインの登録を関連意匠登録といいます)。一方、新意匠法は、改良デザイン(関連意匠)の出願期限を基本デザインの出願から10年後までに延期しました。また、改良デザインにのみ類似する再改良デザインも関連意匠登録の対象としました。

3.新意匠法の施行に備えて
 新意匠法は、より多くの業界・業種に意匠登録制度の活用機会を与えます。一方、新意匠法の下でも、特許庁審査官が意匠登録の可否を判断することになります。従いまして、出願した意匠がすべて登録になる訳ではありません。また、既に公開されたデザインは、意匠登録を受けることができません。新意匠法の施行に向けた準備は重要ですが、今後公表される新しい意匠審査基準なども参照し、出願戦略を慎重に検討することが重要です。新意匠法の疑問点は自己で判断されることなく、日本弁理士会東海会の無料相談窓口を利用するなど専門家への早めの相談をご推奨致します。

図表
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