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外国で知的財産権を取得することの重要性/弁理士 中島 正博

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 『近々、○○国で商売を始めようと考えているが、○○国で特許権(や商標権等)を取得することは必要?日本で取得する以上に費用がかかると聞いているし、取得しても意味があるのか・・・』
 日常の業務において、このような相談を受けることが間々あります。「知的財産権を取得することは非常に重要」であることを念頭に、事業内容や進出予定国における知的財産権の状況等をも考慮して、我々弁理士は、相談者のビジネスが進出予定国においても円滑に進むように回答(アドバイス)することを努めていますが、今回は「外国で知的財産権を取得することの重要性」について、改めて説明させて頂きたいと思います。
 「外国で知的財産権を取得する」ことの最大の理由は、「当該国における実施(使用)の法的根拠を確保する」ことです。例えば、中国で特許権を取得した場合、中国における特許発明に係る製品の製造等は特許権に基づく行為となります。従って、中国で特許権を取得している場合には、仮に中国企業から特許権の侵害訴訟を提起されても、「自己の実施は自己の特許権に基づくものである」旨の主張をすることが可能です。換言すれば、特許権等の知的財産権を取得していない場合、侵害訴訟等において「自己の実施が法的根拠に基づくものである」旨を主張することは、例外的な場合(ex.日本における先使用権の主張)を除いて、非常に困難となります。
 中国における侵害訴訟の話を挙げましたので、現在の中国における侵害訴訟の実情について簡単に紹介させて頂きます。下記表より、中国における知的財産権関連の事件数が増加傾向にあることは明白です。即ち、中国において、知的財産権絡みの訴訟のリスクは従来以上に高くなっており、侵害訴訟を提起された際の有効な対抗策となる「知的財産権の取得」も、より一層、重要となっています。
 また、中国においては、第三者が、日本における著名な商標と同一の商標について無断で商標出願したり、著名な商標と関連する類似の商標を多数、商標出願したりするケースが多々、認められていますが、中国で事業を開始する前に予め自己の商標を出願し、商標登録を受けておけば、上記の「第三者による悪意出願・大量出願による商標登録」を阻止することが出来るという利点もあります。
 以上、海外進出先が中国である場合を例に話を進めてきましたが、例えば東南アジア等の諸外国においても、これまで以上に知的財産権の重要性は高まっております。海外進出をお考えの方、問題が起きてからは多大な出費等が必要となる場合もありますので、十分な知的財産権への事前対応をお勧め致します。

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