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知的財産セミナー2018~企業のオリジンと事業の発展~

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 平成30年1月30日に、日本弁理士会東海支部開設日記念「知的財産セミナー2018~オリジン企業と地域を支える知的財産~」を開催しました。日本弁理士会の東海支部が設置されたことを記念して、日本弁理士会東海支部は毎年この時期に知的財産セミナーを開催しています。

 第1部は「東海地域のモノづくりを支える知財戦略」と題して、経済産業省中部経済産業局地域経済部産業技術課知的財産室室長の大山栄成様にご講演を賜りました。

 『日本の職人の熟達の技は世界のどこの職人にも劣らず、人々の発明能力をもっと自由にのばせば、最も成功している工業国民にもいつまでも後れをとることはないだろう。…中略…ひとたび文明世界の過去および現代の知識を習得したならば、日本人は将来の機械技術上の成功をめざす競争において、強力な相手になるだろう。』(引用元 ペリー提督日本遠征記 下(角川文庫))というペリーの引用に始まり、主に中小企業の知的財産の活動状況について講演頂きました。商標の活用により知名度の向上やブランド力向上を図ることができたという企業のアンケート結果や、超親水性無機塗料の製造会社やオフィス家具の製造会社における具体的な事例についてお聞きすることができました。

 第2部は「ノリタケの歴史と要素技術・知的財産」と題して、株式会社ノリタケカンパニーリミテド常勤監査役の青木哲史様と執行役員 開発・技術本部長の永田滉様にご講演を賜りました。

 ノリタケカンパニーリミテド、TOTO、日本ガイシ、日本特殊陶業というセラミックスの大企業群が、森村市左衛門と森村豊の兄弟によって創立された森村組に端を発するという歴史について講演頂きました。良質な材料が入手困難であった戦後には、高品質な食器を製造することが困難でした。そこで、品質の劣る食器には「ノリタケ」の商標を用いず、「ローズチャイナ」の商標を用いたということです。当時の経営者の「ブランド」に対する意識の高さが伺えます。

 食器のイメージの強いノリタケカンパニーリミテドですが、今や工業機材事業、セラミックマテリアル事業、エンジニアリング事業、食器事業という事業を推進しています。食器を研ぐための研磨・研削部材から工業機材事業に発展し、陶器の材料からセラミックマテリアル事業に発展し、窯の技術からエンジニアリング事業に発展しました。食器の要素技術から開始して、その技術を足掛かりに各分野の事業を発展させる様は、既に保有している技術から事業を拡大させた好例と言えるでしょう。

 第3部は「豊田自動織機の歴史と知的財産戦略」と題して、株式会社豊田自動織機知的財産部部長で弁理士の伊東正樹様にご講演を賜りました。

 G型自動織機の特許をプラット社に譲渡した資金を基に現在のトヨタ自動車が設立されたことは有名だと思います。しかし、豊田佐吉がそれまでに二度も企業の社長を辞職していたことはそれほど知られていないと思います。そのような挫折の中で、人任せにせず自ら発明する姿勢の重要性を豊田佐吉は学んだようです。不良品を後工程に流さず、製造工程で製品の品質まで造りこむトヨタ生産方式の思想が、G型自動織機の製造時期というこれほど前から誕生していたことに感銘を受けました。

 その後プラット社は、1982年に倒産します。一方、豊田自動織機は、繊維機械にとどまらず、産業車両、コンプレッサーと事業を拡大した結果、現在も発展を続けています。

 自らのオリジン(原点)を大事にしつつも一つの事業に拘泥せず、事業形態を時代に合わせることのできた企業が生き残ることができる、それが学べるセミナーだったように思われます。

 知的財産権制度推進委員会

 弁理士 一色 昭則

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