新聞掲載記事

クラウドファンディングに潜む知財リスク/弁理士 加藤 肇

  • 権利取得
  • 契約/紛争

 昨今ではクラウドファンディングを利用して新製品の製造販売を行う事例が増えてきており、クラウドファンディングの成果が新聞などの各種媒体で取り上げられることも多いため、クラウドファンディングに挑戦してみたいと考える方も多いことでしょう。
 クラウドファンディングでは、製品の製造開始前に資金調達ができることに加え、各種のウェブサイトやSNSを用いての情報発信により、大きな宣伝広告効果を得られます。また、これらの情報発信に起因して各種メディアに取り上げられることもあり、宣伝広告の相乗効果を得ることもできます。このように、より多くの人の目に留まるようにし、予め資金を調達したうえで製品の製造販売を開始することができるというメリットに注目が集まりますが、知的財産権については様々なリスクを包含していると言えます。

・他者の知的財産権を侵害するリスク
 クラウドファンディングに限らず、新製品を世に出す場合には、予め知的財産権を侵害しないことを確認することが必須となります。クラウドファンディングで成功を収めた後に知的財産権を侵害していることに気付けば、製品の名称や構造を変更する必要が生じますし、知的財産権の侵害に気付かず権利者から警告を受けてしまった場合には、その対応に費用や時間が必要となります。製品の名称は商標権を侵害しないものとしなければなりませんし、構造、機能及びデザインについては、特許権及び意匠権を侵害しないものとしなければなりません。
 また、クラウドファンディングの中には、海外で既に販売されている製品を日本へ輸入して販売するものもあります。しかしながら、知的財産権を侵害するか否かは国ごとに判断する必要があり、海外では知的財産権の侵害のおそれが無くても、日本で取得されている知的財産権を侵害するおそれがある点にも、注意が必要です。

・自身による知的財産権を取得できなくなるリスク
 クラウドファンディングを実施した結果として、想定していたよりもはるかに多くの資金の調達に成功した事例も多いでしょう。このような場合には、その製品が他社により模倣されることを抑制すべく、知的財産権の取得を検討することになるかもしれません。
 しかしながら、特許、意匠、及び実用新案は、出願前に公開されていないものでなければ、権利化することができません。ここでいう公開とは、自身によるWebサイトへの掲載、SNSへの投稿、製品の販売、展示会等への出展等が含まれます。
 ただし、特許、意匠、及び実用新案には、「新規性の喪失の例外適用」の手続きを踏むことにより、自身による出願前の公開やその公開に起因した第三者の公開に基づいて、特許、意匠、及び実用新案が権利化できなくなる事態を防ぐことができます。
 しかしながら、新規性の喪失の例外適用の申請には、公開した行為ごとに、公開の事実を示す書面を提出する必要があります。具体的には、複数のWebサイトに製品の情報を載せていた場合には各Webサイト、SNSやブログを利用して連日のように情報を発信していた場合には、それぞれの日ごとに、公開の事実を示す書面を提出する必要が生じる可能性があります。自身のWebサイトやSNSへの投稿の場合には、公開の履歴を追うことも容易ですし、展示会等への出展の記録も残していることでしょう。ところが、製品の情報を他社のWebサイトに掲載してもらったにも関わらずそのことを失念してしまい、新規性の喪失の例外適用の書面を提出していないことがあれば、他社の公開行為により、知的財産権を取得できなくなる可能性が生じます。
 このような情報発信による公開は、クラウドファンディングの開始から日を経るほどに増加しますので、クラウドファンディングを開始した後であってもなるべく早期に特許、意匠、実用新案の出願を済ませることが重要となります。

・商標権の取得に関するリスク
 製品につけた名前には、他者に使用されないよう、商標権を取得する必要が生じます。商標権の取得は、特許、意匠、及び実用新案とは違い、その製品名が公開された後であっても取得することができますので、クラウドファンディングを開始した後でも通常と同様の手続きで済みます。しかしながら、製品名についての商標権を第三者が取得することもできてしまいます。第三者が商標権を取得してしまった場合には商標権侵害のおそれが生じ、クラウドファンディングで知名度を上げた製品の名称を変更する必要に迫られるかもしれません。

 以上のように、クラウドファンディングには多くの知財リスクが潜在している点を述べましたが、以上のリスクは一般的なものであり、ケースバイケースで他のリスクが生ずる可能性もあります。また、これらの知財リスクはクラウドファンディングに限らず、新製品の製造販売を行う場合には生ずるものです。弁理士は様々な知財リスクに対して対応できる専門家ですので、お気軽にご相談ください。

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