新聞掲載記事

特許権とは/弁理士 高田 珠美

  • 特許(発明)
  • 権利取得

1.特許とは
 現代では、多種多様な技術開発が進行中です。その試行錯誤の結晶である発明を他人に真似されないためには特許が必要だと、ご存知の方も多いでしょう。
 特許とは、特許法によって特許権を与えることです。特許権は、不動産や車などの有体財産を対象とする所有権と「独占排他性を有する」点において共通しています。一方、特許権は「発明」という目に見えない思想やアイデアといった無形の財産を保護する権利です。無体財産は形を持たないので、有体財産のように物理的に占有して支配することはできません。また、発明には形がないので、複数人が同時に発明を実施しうるという性質があります。思想やアイデアなどの情報は、物を盗まずとも、目で見たり記憶したり写真を撮ったりすることで容易に盗まれる可能性があります。このため、発明が適切に保護されなければ、発明者は、自身のアイデアを守るために秘密にしようとするかもしれません。しかしそれでは、発明者自身が発明を有効に利用することができないだけでなく、同じものを発明しようとする他人が重複して研究や投資を行う可能性も生じてしまいます。

2.特許権はどのように発生するか
 発明が特許を受けるためには、発明の内容を書類にまとめて特許庁に特許出願をし、出願された発明に特許を与えてもよいという要件(特許要件)を満たしているかどうか、特許庁で審査を受ける必要があります。特許要件には、「発明が客観的に新しいこと(新規性)」「発明が容易に考えつくようなものでないこと(進歩性)」などが含まれます。特許出願を行うと、特許が認められるかどうかに関わらず、原則として1年6月後には発明内容が一般に公開される出願公開制度が適用されます。出願された発明が特許要件を満たしていると認められ、特許料を支払うことで特許権が発生します。特許を受けた発明のことを「特許発明」と呼びます。特許権が発生すると、特許発明の内容が特許公報に掲載されて一般に公開されます。つまり、新しく有用な発明を特許出願することによって公表した者に対し、その代償として特許権が与えられる仕組みが設けられています。この特許制度は、有用な技術を世に引っ張り出すために設けられているのです。

3.特許権の効力
 特許権を持つ特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有します(特許法第68条)。「業として」とは、事業としてという意味です。「専有」とは、特許権者が特許発明を業として実施する権利を独占し、他人の実施行為を排除できることを意味します。このため、正当な権利を持たない者が事業として特許発明の実施をした場合、特許権の侵害となります。特許権者は特許権の侵害に対して、(1)侵害行為の停止や予防を求める差止請求(2)侵害品の廃棄や侵害行為に用いられた設備の撤去を求める廃棄除却請求(3)損害賠償を請求するなどの民事上の手続きを行うことができます。侵害者には刑事罰が科せられることもあります。このように、特許権は非常に強力な独占排他権です。
 また、特許権は永続的なものではなく、権利の存続期間は原則として出願日から20年です。すでに一般に普及している技術に永遠に特許権を与えておくことは、技術進歩の妨げとなるからです。

4.特許権を取得するメリット
 特許権者は、他人に真似されずに特許発明の実施をできるので、技術開発に投じたコストの回収することができます。特許権者は、特許発明を利用したい第三者と契約し、ライセンス料を得ることもできます。特許を取得したことは、自身の技術力をアピールする手段ともなります。ただし、特許出願をすると、発明内容が公になる点に注意が必要です。特許を取るかどうかで悩んだら、まずは専門家である弁理士にご相談ください。

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