新聞掲載記事

商標権について/弁理士 安達 友和

  • 商標(ブランド)

◆商標とは
 商標とは、よく「ブランド」という言葉に言い換えられます。これは「商標」という言葉が分かりにくいせいかも知れません。「商標」とは「自他商品識別標識(または自他役務識別標識)」であると言われており、つまり、自己の商品または役務に付けることで他人の商品または役務と区別するものになります(「役務」とは聞き慣れない言葉ですが、現代語に言い換えると「サービス」のことです)。例えば、今みなさんが読んでいる本誌の名前「中部経済新聞」も、他人の商品(新聞)と区別するための「識別標識」、つまり商標になります(「中部経済新聞」は実際に商標登録第5260288号として商標登録されています)。他の例でいうと、「クロネコヤマトの宅急便」というサービスの名前も他人の役務(宅配サービス)と区別するための「識別標識」、つまり商標になります(「クロネコヤマトの宅急便」は実際に商標登録第4588808号として商標登録されています)。このように、商標とは、その名前などがその商品や役務と結びついたものになります。商標は、文字のみからなるものだけではなく、ロゴや図形も商標になります(下記の図表を参照)。

◆商標権とは
 商標権は、特許庁に商標登録をすることによって発生します。つまり、自己の商品または役務の商品名や役務名(サービス名)などを他人が使用している場合であっても、商標登録をしていなければ、商標権に基づいてその使用を差し止めることはできません。ここで、重要なことがあります。商標権は、一番早く特許庁に申請した人に与えられる、という原則があります。これを「先願主義」といいいますが、要するに「早いもの勝ち」です。つまり、他の人が自分と同じ商品名の商標登録を先に申請してしまった場合、たとえ自分のほうが先にその商品名を使用していたとしても、負けてしまいます(例外はありますがここでは割愛します)。一旦、商標登録をすれば、商標権の効力は強力です。その商標の使用を独占することができます。具体的には、他人が同じような商品や役務にその商標を使用している場合、その使用を差し止めることができます。また、その使用につき損害賠償を請求することもできます。

◆商標登録の仕方
 まず、特許庁に「商標登録願」(つまり願書)を提出します。その後、特許庁において審査が行われます。現在の審査待ち期間はおおよそ4ヶ月から7ヶ月です。審査に通ると「登録査定」という通知が来るので、あとは「登録料」を納付すると登録になります。この手続きの代理業務を行っているのが「弁理士」です。

◆登録できる商標とは
 特許庁に商標登録をしてもらうには、主に次の2つの要件を満たす必要があります。要件1は、「自他商品識別力(または自他役務識別力)」があること。要件2は、類似する商標が登録されていないこと。要件1については、例えば商品「りんご」に「りんご」という商標を付けてもそれは単にその商品の普通名称(一般名詞)であり、自他商品識別力がないため、登録が認められません。また、「おいしいりんご」と付けても、それは単に商品の品質を表示しているに過ぎず、やはり自他商品識別力がないため、登録が認められません。

◆商標権の権利期間
 商標権の権利期間は、登録後10年間です。但し、更新をすることにより、10年単位で何回でも更新可能です。実際に、下記の例のように100年以上も権利を維持し続けている登録商標が多数存在します。
「味の素」登録第39051号 登録年:明治42(1909)年
「資生堂」登録第111035号 登録年:大正9(1920)年

 商標のことでお悩みでしたら、専門家である弁理士にご相談下さい。

文字の商標の例

はっぴょん

商標登録第4586465号

ロゴの商標の例

商標登録第3154915号

図形のみからなる商標の例

商標登録第4586464号

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