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日本弁理士会東海会 安部 誠 会長に聞く

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 日本弁理士会東海会の2024年度会長に、安部誠氏(弁理士法人協働特許事務所代表パートナー)が就任した。愛知、岐阜、三重、静岡、長野の5県下、千人弱の弁理士で組織する東海会は、全国の地域会の中でも先駆的な事業を展開し、地域産業の知財活用に貢献している。「農林水産分野やスタートアップ支援など、弁理士に求められる業務は拡大している。これらに前向きに応えていきたい」と話す安部会長に24年度の取り組みを聞いた。

-まずは抱負から。
 コロナを境に人工知能(AI)を中心とした新しい情報テクノロジーが急速に発展した。現在はデジタル社会であり、『コト消費』や『トキ消費』に価値観がシフトしてきている。弁理士の業務も、従来は発明を特許や実用新案で保護するということに主軸があったが、これからはコロナ後の新しい情報化社会にマッチした知財活用の支援がポイントになる。例えば中小企業やスタートアップのブランディング支援などだ。今後は意匠・商標登録などを活用して企業のブランド力を高めるための支援に軸足を移していきたい。

-中小企業などへの具体的な支援は。
 東海会独自の事業である『知財経営サロン』は定例型に加えて、出張型も実施している。今後、より多くの企業に参加してもらえるよう出張型サロンの拡充を図っていく。また地域の商工会議所と連携した『知財経営支援ネットワーク』を通じて、地域の知財ニーズに即した支援サービスを提供する。ネットワークでは企業内で知財経営を担うことができる人材の育成にも力を入れていく。スタートアップ支援では今年10月、名古屋市に国内最大級のインキュベーション施設『STATION Ai』がオープンする。ここを拠点に愛知県などと連携しながら、スタートアップやベンチャー企業の成長を知財という側面から支援したい。

-農林水産分野でも知財への関心が高まっている。
 農林水産分野では人手不足や後継者不足から、最新の情報通信技術を取り入れて生産を効率化する“農業の工業化”が進んでいる。こうしたスマート農業を東海会全体でアシストできるよう、内部でセミナーを開くなどして体制を整えている。エリア5県は農業県という側面も持ち、特にブランド戦略は今後、さらに重要になる。工業と農業の両輪で地域産業の発展を支えていく。

-金融機関や行政との連携は。
 東海会ではこれまでに地域のいくつかの金融機関と協定を締結しているが、新たに愛知、静岡県内の信用金庫とも提携し、取引先企業へのワンストップサービスを実施する。また昨年7月には東海会の岐阜、三重、静岡、長野県に地区会長を置き、各県との連携を密にし、スピーディーな対応ができるようにした。そのほか自治体が設置した海外オフィスを拠点に、現地進出を計画する企業に知財戦略をアドバイスする国際活動も拡充していく。

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