新聞掲載記事

知財金融対応委員会

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  • 戦略/活用

 本年度、日本弁理士会東海会では、知財金融対応委員会を新たに立ち上げました。一昨年度および昨年度の2年間、東海支部の副支部長・支部長を務め、中小企業支援向け事業を進める際、金融機関との協力関係を模索したものの、もう少し時間を掛ける必要があると感じ、また、本年度東海会会長も金融機関との関係構築の必要性を感じていたことが立ち上げの背景にあります。

 ところで、「知財金融」って何でしょうか?おそらく、具体的なイメージを持ち、質問者に対して上手く説明できる人はいないと思います。その理由の一つは、世の中で共有できる定義が未だ定まっていないこと、「知財金融」 によって得られる現実的なメリットが実現されていないことに起因すると感じています。

 最も端的に考える場合、金融機関が特許や商標といった知財を担保に融資をすること、を想像してしまいがちです。しかし、知財を担保にするという行為は、かなりハードルが高く、この態様を知財金融の定義とする場合、知財金融の展開は難しくなってしまいます。

 そこで、知財金融委員会では、知財金融を知財×金融と解釈し、知財の専門家である弁理士と中小企業と緊密な関係を有する金融機関との協働による新しいタイプの知財活動事業として位置づけました。

 具体的な委員会の活動内容として、

 (1)金融機関の職員の方に身の周りの知財を知っていただくための勉強会を中心とする活動、

 (2)金融機関の職員の方が持つ知財に関する疑問や相談事に対応するための知財ほっとラインの開設、

 (3)金融機関の顧客の方に対して日々の事業に存在する知財を知っていただくためのセミナー、

 の3つの活動を準備しています。

 金融機関の関係者の皆様には、知財金融対応委員会では、従前の形に拘ったセミナーとは異なり、極めて平易で日常業務を想定した内容の30~45分程度の勉強会を想定していることをご理解いただければと考えております。既に2つの金融機関における職員の方を対象として実行済みであり、解りやすいとの感想を頂いています。

 日常の業務の中に知財の種が散らばっていることに気づいていただくことにより、従前とは異なる目線から顧客の事業性の評価を行うことが順次可能になってくると考えております。具体的な対応や、細かな質問事項につきましては、知財ホッとラインを通じて、知財の専門家である弁理士にご相談頂くことにより、日常業務にさらなる負荷が生じることなく、より多くの項目を用いて、顧客の事業性評価の精度を向上させることができると考えます。

 中小企業の皆様には、各社にとって本当に必要な知財を知っていただくことが可能となり、事業性の観点から、費用対効果の高い知財の使い方を学んでいただき、実際に各社の事業を継続するために必要不可欠な知財の存在を認識して頂くことができると考えています。弁理士に対する相談は敷居が高いと感じている旨をよく耳にしますが、弁理士に接触する場としてセミナーを開催いたしますので、セミナーをきっかけに、相性の良い弁理士にご相談頂くことが可能になると考えています。また、金融機関の関係者にご紹介いただく点におきましても、敷居を下げることができると考えております。

 以上の通り、活動を開始し始めたばかりの知財金融対応委員会ではありますが、活動開始と同時に全力疾走で活動を継続しております。ご興味をもたれましたら、金融機関の皆様は日本弁理士会東海会までご連絡ください。中小企業の皆様は、お取引のある金融機関にご相談頂けましたら、日本弁理士会東海会が対応いたします。

 是非、東海地方から知財×金融を全国に波及させていきましょう。

知財金融対応委員会 弁理士 井上 佳知


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