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早期審査のご案内/弁理士 小早川 俊一郎

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 特許の場合、特許権を取得するためには、特許出願を行うだけでなく、審査を受けることが必要です。そして、審査を受けるためには、審査請求という手続を特許出願とは別に行うことが必要です。2016年においては、この審査請求の後、最初の審査の結果が出るまでに、平均して9.5か月掛かっているとのことです(出典:特許行政年次報告書2017年版 統計・資料編)。
 他方、意匠や商標の場合も、意匠権や商標権を取得するためには、意匠出願や商標出願を行い、審査を受けることが必要ですが、これらについては特許出願の場合とは異なり、審査請求をせずに審査を受けることができます。
 前述の統計に依れば、意匠出願については、出願後、審査の結果が出るまでには、平均して6.2か月掛かり、商標出願については、4.8か月掛かっているとのことです。つまり、審査結果が出るまでには、一定の期間が必要となります。出願人等としては、「できる限り早期に保護を得たい!権利を得たい!」と考えるものです。このような出願人等のニーズに応えるために、前述の審査に要する期間を短くするための制度として、いわゆる「早期審査制度」が存在します。
 文字どおり、通常の審査に比べて、審査結果を早く得ることができる制度です。特許の場合、早期審査の申請から平均約3か月以下で審査結果が得られるとされています(2015年実績)(特許庁)、商標の場合には、申請から平均1.8か月で審査結果が得られるとされています(平成29年実績)特許庁)。
 しかし、全ての出願について利用することができる制度ではなく、以下のような要件があります。
 特許の場合、早期審査の対象になる出願は、(1)実施関連出願(2)外国関連出願(3)中小企業等の出願(4)グリーン関連出願(5)震災復興支援関連出願(6)アジア拠点化推進法関連出願と定められています。また、早期審査の申請をするためには、早期審査をする事情等を説明するための書類(早期審査に関する事情説明書)を提出する必要があります。
 意匠、商標の場合、早期審査の対象になる出願は、(1)権利化について緊急性を要する実施関連出願、(2)外国関連出願と定められています。((1)については、出願対象の意匠、商標を第三者が許諾なく使用している場合等と定められています)。また、特許同様、早期審査に関する事情説明書を提出する必要があります。
 このように一定の要件等はありますが、早期に保護を図ることが必要である場合には、一度、早期審査について検討されてみてはいかがでしょうか。

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