メディア掲載情報

特許制度~特許って必要?~/弁理士 一色 昭則

新聞掲載記事
  • 特許(発明)
  • 戦略/活用
  • 契約/紛争

1.なぜ特許制度が必要なのか?~特許制度の意義~
 ガリレオガリレイは、便利な灌漑用機械を発明し、当時の国王に手紙を書きました。「この発明をするために莫大な費用、労力を費やしました。こんなに苦労したのに他の人が何の苦労もなくこの機械を製造するということは耐えられません。一定期間、私に独占的に製造販売する許可を下さい」要約するとこのようになります。開発には開発費がかかりますから、マネした人はその開発費の分だけ安く製造販売することができます。そうすると発明した人は経済的に困窮してしまいます。
 誰でもマネできる社会であれば、誰もがマネしようとします。その結果、(1)価値ある発明または製品を生み出した人が貧しくなる、(2)そんなことは馬鹿らしいから誰も新しいモノを創ろうとしなくなる、ことになります。頑張った人が報われず、社会の需要を喚起する製品が誕生しなくなるのです。特に日本のような(容易に採掘可能な)資源が乏しいと言われている国においては、技術開発・生産能力なくして経済は発展しません。特許制度は、国の経済を活性化させるカンフル剤なのです。

2.どんな発明が特許になるのか?~権利の発生~
 「発明」ときくとエジソンの白熱電球のようなものを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか? それまでにはない「新しい物」、それをこの世に誕生させることが発明である。その考えはある意味では正しいですが、そうとばかりも言い切れません。実際には、それまでにある物を「改良」する発明のほうがずっと多いのです。そういう意味では、発明することは日本人に適しているのかもしれません。
 発明は、例えるなら、ある料理にある調味料を加えるようなものです。調味料が新しかったり、その料理にそんな調味料を加えるなんて思いもよらなければいいのです。これを「進歩性」と言います。
 特許庁の審査官は、進歩性やその他の法律的な事項を審査します。審査官がこのままではダメだと判断した場合には、その旨を「通知」します。通知を受け取った人には権利範囲の見直しや反論の機会が与えられます。もちろん、問題無ければ特許になります。

3.特許があると何ができるのか?~特許権の行使~
 特許があると、模倣品を製造販売していると思われる他社に「つくるな」、「うるな」、「かねはらえ」と言うことができます。相手に直接言うこともできますし、裁判所に訴えることもできます。これらのことが法律的に認められていることから、特許制度は、「競合する企業同士の鍔迫り合い」を市場とは別のところで容認しているといえます。

4.特許権者に対してどう対抗できるのか?~特許への対抗措置~
 特許で訴えられたらどうしましょう。その場合には、相手の権利をつぶすことができます。「その特許の発明は、従来のこの技術とほとんど変わりませんよ」という事実を突きつければよいのです。それとは別に「その特許が出願される前にウチはこの技術を使っていますよ」という理由で回避することができます。

5.特許があると何が嬉しいのか?~特許のメリット~
 製品やカタログに「特許番号」を記載することが法律的にも奨励されています。特許を宣伝広告に使えるのです。また、金融機関に「ウチはこういう特許を持っていてこの技術を軸にビジネスを展開していきます」とアピールすることもできます。

6.どんなことに注意が必要なのか?
 特許は国ごとに発生します。外国でも権利が必要であれば、その国で特許を取得する必要があります。また、ある製品を輸入してみたら、他社の特許を侵害していた、ということもありえます。製品を製造していない小売業者も特許を侵害する可能性があるのです。

ページトップへ