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知的財産に関する契約について/弁理士 服部 雅紀

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 発明、意匠、商標などの知的財産は無形の価値あるモノであるから、その扱いについて契約書を交わしておかないと、共通の理解や認識が曖昧になったり、事業運営のリスクを伴うことになる。
 一般に中小企業で誕生した発明は、事業を成長し発展させていくための礎となるもので、社員がした発明について自社に職務発明規程を設けることが多い。
 また社外の取引先となる試作先、開発委託先、デザイン委託先、製品納入先、販売委託先、共同研究開発先に対しては、知的財産に関係する様々な契約の締結を欠かすことができない。取引先との間で秘密を漏洩したら一瞬にしてビジネスは終了してしまう。そのため、秘密が外部に漏れないように秘密保持契約を結ぶことから始まる。契約内容は、秘密の目的、秘密情報、秘密保持、目的外使用の禁止、知的財産権の扱いなどを規定する。秘密保持は知的財産を扱う分野では重要な履行義務になっている。
 各種の代表的な知財関連契約における特徴ある条項について述べると次のとおりである。
 共同研究開発契約では、開発成果の認定基準、帰属、産業財産権の出願、利用、開発費用の分担、委託等の禁止事項、会議の報告などが主な条項になる。研究開発委託契約では、委託する際の開発の対象、再委託の禁止、開発費用、開発内容の変更、開発資材の取扱、情報提供、報告、開発成果の帰属、開発成果の利用、第三者との開発の制限、有効期間、中止などが主な条項になる。
 またライセンス契約は、特許権者が他人に特許発明の実施を許諾するもので、特徴的な条項として、通常実施権の許諾(地域、内容、期間)、再実施許諾、契約製品の輸出、実施料、実施料の発生時期・支払時期・支払方法、報告義務、調査、実施料の不返還、実施料の変更、技術的効果の保証、無効事由・第三者の権利侵害に関する担保責任、侵害排除義務、技術情報の開示・技術援助、実施義務、品質保証義務、下請、特許表示、競業避止義務、改良技術の取扱などがある。
 商標の使用許諾契約は、商標権者が登録商標の使用を他人に許諾するもので、特徴的な条項として、本件商標の特定、通常使用権の許諾・対価の支払、使用料の報告・記録・変更、商標尊重義務、不適正使用の禁止、付記結合の防止、表示・品質コントロール義務、再許諾の禁止、使用状況のチェック、商標権の更新登録申請、商標権の侵害と保全、保証の否認などがある。
 このような知財に関連する契約の注意事項としては、変化する事業の外部環境、内部環境に応じて定期的に見直す必要があり、また取引先との関係性が変わるにつれて契約相手との契約の有無または契約内容更新の有無を検討する必要がある。
 知的財産の契約の重要性が高まる中、企業にとっては、契約担当を社内に配置し、外部の知財専門家である特許事務所や法律事務所と顧問契約を結び、自社の知的財産関係の範囲を決め、知的財産関連を一括りにして契約の更新、管理、新設の必要性等を依頼することも一案であろう。

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