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ワールドカップと商標~便乗商法の規制について~/弁理士 黒瀬 勇人

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 22年の今年、22回目のFIFAワールドカップがカタールで開催されます。
 これに先立ち、今から12年前の2010年11月、商標「WORLD CUP 2022」は、FIFAによって、スイスで出願され(基礎出願)、この基礎出願に基づき、2013年には日本でも登録されました(国際登録1095515)。「WORLD CUP 2022」は、開催される10年近く前から商標権によって保護されています。
 このような世界的なスポーツ大会は、大変盛り上がるものですが、知財との関連で思い出されるのが、2019年に日本で開催された「ラグビーワールドカップ」です。
 「RUGBY WORLD CUP」(登録5475091)や「JAPAN 2019」(登録5404760)などの商標権を取得した主催者の関連団体が、「不正使用は商標権侵害の可能性がある」といった内容で注意喚起をしていました。
 これを受け、スポーツバーなどの飲食店やスポーツショップなどで、「ラグビーワールドカップ」などの名称を掲げて盛り上げるつもりが、難しくなったという話を聞きました。また、試合会場のある開催地の地方都市でも、名称の安易な使用がためらわれた結果、開催地にも関わらず盛り上がりに今一つ欠けているといった記事を読んだ記憶があります。
 主催者側(運営者側)は、スポンサー以外の企業等が勝手に名称を使用して売上げが増加すれば、大会の運営に必要な協賛金を負担してくれたスポンサーの利益を損なうと判断して注意喚起を行っているようです。確かに、大きな大会に便乗して、来店者を増やしたい、関連する商品の売上げを増やしたいという動機は生じやすく、そのような便乗商法を規制しようとする意義は理解できます。
 ですが、あまりにも強くその使用を規制すると、委縮ムードが生じ、大会への盛り上がり気運を失わせ、かえってスポンサーの利益を損なわせる奇妙な結果を生むことになるかもしれません。バランスが難しいところです。
 名称の使用について不安に思われる方もおられるかもしれません。ですが、これまでの様々な事案における運営側が示した解釈や裁判例の積み重ね等を踏まえれば、大会名などの名称を使用する行為の全てが商標権の侵害になるわけではないことは明らかです。
 実際、商標使用の制約がある中で、様々な工夫をして大会を盛り上げ、地元の活性化につなげる取り組みをしている自治体の事例を聞いたことがあります。
 大会の名称の使用などについて、その判断が難しい場合は弁理士に相談してください。

国際登録番号:1095515


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