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スタートアップ知財支援/弁理士 森岡 智昭

新聞掲載記事

     スタートアップ企業が育ちにくい過疎地と言われていた東海エリアですが、近年ようやく活動が活発になってきました。私は一弁理士として日々スタートアップ企業を知的財産の側面から支援していますが、歴史ある大企業や中小企業と、歴史の浅いスタートアップ企業とでは、その文化に大きな違いを感じます。価値観、経験値、コミュニティ、用語、平均年齢、スピード感、解決手段など、あらゆるものが異なるのです。このようなスタートアップ企業は、既存の産業構造に、新たな価値観という刺激を与えてくれる存在であり、次世代産業の一翼を担う存在になると信じて、全力でサポートしていきたいと考えています。
     文化の違いに起因して、知財分野の専門家として弁理士が行うスタートアップ企業の支援方法も大きく変わってきます。大企業と異なることは当然ですが、いわゆる中小企業とも違います。中小企業ではビジョンやミッションが明確でないことも多く、それでも大きな問題が生じているわけではありませんが、スタートアップ企業はこれらがあって初めて事業がスタートします。必然的にスタートアップ企業の知財戦略は、その企業の事業戦略と一体になっていることが当たり前であり、知財を考えることは、そのまま事業を考えることになります。事業戦略と知財戦略の一体性が必要ということは、昔から言われているコンセプトですが、大企業ではそれぞれの戦略を考える組織が別々という事情もあって、今でも知財業界の大きな課題の一つです。それがスタートアップ企業になると、最初から事業のビジョンをしっかりと考えている相手方と直接話をすることができるので、当然のように事業と知財が一体となった戦略の議論が可能となります。このような議論ができることは、弁理士としてはとてもありがたいことで、事業戦略と知財戦略の一体性を持たせるという課題はここでは難なく解決することができるのです。
     一方、スタートアップ企業の知財支援の現場においては、特許などの出願・権利化の仕事とは全く異なる様々な評価や判断が求められます。例えば、「来月の展示会に出展する。何を開示してよくて、何は秘匿しないといけないか?」といった具体的な公開/秘匿判断や、「大学と共同研究をやりたいが、どのように進めればよいか?」と言った第三者との連携に関する枠組み設計など、会社の事業内容や事業フェーズに応じた多種多様な課題に対応することになります。これらの対応においては、「考え方」や「考慮すべき事項」を明示することは必須であるものの、それだけでは不十分であり、リアルに具体的事案に当てはめて実際に評価・判断していく応用力や適応力が不可欠となります。このような対応をしようとすると、弁理士とスタートアップ企業との関係性は、表面的なものであってはならず、経営の中枢に入り込むほどの深い連携関係や信頼関係を構築することが求められるのです。
     我々弁理士は、知的財産のことを深く勉強してきた専門家ではありますが、その領域だけに閉じこもっていては、次世代を担うスタートアップ企業が抱える知財関係課題の解決という要請に応えることができなくなります。目まぐるしく変化する社会情勢にしっかりと目を向けて、常に新しい情報を収集してスキルアップを図ることの必要性を強く認識し、知財業界一丸となって産業の発展に貢献していきたいと考えます。

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