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商標の国際出願について~出願時及び出願後の注意点~/国際知財委員会 弁理士 矢代 加奈子

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 世界各国で商標権を取得したいと思ったときに、一度の手続で各国に商標出願をすることができたら、非常に便利だと思いませんか?それが可能なのが商標の国際出願(マドプロ出願)制度です。
 マドプロ出願とは、マドリッド協定議定書(マドリッドプロトコル)という条約に基づき、加盟国に単一の様式で商標出願することができる国際的な制度です。マドプロ出願の主な目的は、国際的な商標出願プロセスを簡素化することです。これにより、企業や個人は、複数の国や地域で商標保護を申請する際に、手続と費用を大幅に削減することができます。出願人は、各国や地域の特許庁に個別に出願する必要がなくなり、また、住所や名称の変更、権利の移転、更新に関しても、一括して国際事務局に手続を行うことができます。
 ただし、マドプロ出願には、いくつかの制約も存在します。まず、国際出願をするためには、日本での登録または出願(基礎登録または基礎出願)が必要となります。国際登録は、本国の基礎登録または基礎出願に一定期間従属しており、基礎登録または基礎出願が失効すると国際登録も失効するというリスクがあります。また、商標が登録となるかどうかは、指定国の特許庁が審査を行うため、各国の登録要件を満たさなければ登録とはなりません。
 そのような制約の中でも、特に出願時に注意しなければならない点がいくつかあります。1つ目の注意点としては、指定商品・役務(サービス)の表示は、各国が独自の審査基準で適切な表示であるかどうかを審査するため、国ごとに指定商品役務の表示を変えた方が良い場合があるということです。例えば、多くの国では、「被服」という包括的な表示が認められていますが、アメリカでは広範囲で不明確であるとして認められておりませんので、「被服、すなわち、ジャケット,シャツ,セーター,スカート」のように、具体的に表示する必要があります。また、いくつかの指定国では「部品及び附属品」という表示が認められていないため、例えば「自動車並びにその部品及び附属品」や「動力機械器具の部品」という表示で出願すると、拒絶される場合があります。この場合は、「自動車」、「動力機械器具」というように指定商品の表示を補正する必要があります。
 2つ目の注意点としては、国際出願は、国際事務局に1通の願書をオンライン等で提出することができますが、指定国において拒絶通知が出された場合、各指定国において、その国の代理人を通じて応答手続を行う必要があるということです。また、拒絶通知に対する応答期間は、各国により異なり、短い場合ですと15日程度の国もあります。従いまして、指定国での拒絶通知を受け取りましたら、すみやかに各国の現地代理人に連絡し、応答期限及び応答に必要な書類、情報等を確認する必要があります。拒絶通知に対して、所定の期間内に応答しなかった場合は、その指定国において拒絶確定声明が出されます。尚、国際出願は、一度拒絶された国に再度出願する場合、その国を指定して事後指定をすることが可能です。
 さらに出願後の注意点として、指定国の中には、商標を使用しているという使用宣誓書や商標の使用証拠の提出を義務付けている国があります(別表参照)。これらの宣誓書は、国際事務局に提出するのではなく、各国の代理人を通じて各国特許庁に提出する必要があります。所定の期間内に宣誓書や使用証拠が提出されませんと、その国における登録は取り消されることになります。
 以上のように、注意しなければならない点もいくつかありますが、マドプロ出願は、複数の国で商標権を取得するには、非常に効率的で便利な制度ですので、検討する価値はあると思います。また、弁理士は、国内の商標出願だけではなく、外国商標出願やマドプロ出願に関してもご協力が可能ですので、ぜひお気軽にご相談下さい。

アメリカ

 ・米国登録日から5~6年目の間
 ・米国登録日から9~10年目の間
 ・その後10年ごとに提出

フィリピン

 ・国際登録日/事後指定日から3年以内
 ・フィリピン登録日から5~6年目の間
 ・国際登録の更新日から1年以内
 ・国際登録の更新日から5~6年目の間

メキシコ

 ・メキシコ登録日から3年後~3ヵ月以内
 ・国際登録の更新日から3ヵ月以内

カンボジア

 ・カンボジア登録日から5~6年目の間
 ・国際登録の更新日から5~6年目の間 

モザンビーク

 ・国際登録日/事後指定日から5年以内
 ・国際登録の更新日から5年以内ごとに提出  

(別表)「商標の使用宣誓書等の提出義務がある国」

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