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「意匠登録」なぜ必要?大切なデザインを守る為に/弁理士 森 有希

新聞掲載記事
  • 意匠(デザイン)
  • 戦略/活用

◆商品は「我が娘」
 「商品は手塩にかけたわが娘、お得意先はかわいい娘の嫁ぎ先」こう語ったのは、パナソニックの創業者、故松下幸之助氏です。この言葉には、“商品を仲介として、お客様との良好な関係を築くことが肝要である”との示唆が含まれているように思われます。
 今時の言い方をするなら「顧客との接点(タッチポイント)を大切に」といったところでしょうか。
 お客様との良好な関係を築くために、タッチポイントとなる商品を魅力あるものにすべきことは、疑いのないところでしょう。その際に重要な役割を果たすのが「デザイン」です。
 例えば、スマートフォンのスタイリッシュなデザインに惹かれた顧客が、そのメーカー自体のファンになることがあるように、商品のデザインは、企業イメージをも左右し得る力を秘めています。
 このようなデザインの潜在能力に着目し、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用しようとする経営手法が提唱されるようになりました(2018年経済産業省等により公表された「デザイン経営」宣言参照)。

◆大切なデザインを模倣から守るには
 しかし、せっかく優れたデザインを開発しても、安価なコピー商品が出回れば、市場での競争力が低下するばかりか、粗悪な模倣品により企業イメージを損ねるおそれも。こうした模倣を防ぐ手段として「意匠登録」があります。
 「意匠登録」とは、商品等のデザインを知的財産権として保護するものです。特許庁に対し、登録したいデザインの図面等を添付した書類を提出することで申請(出願)を行うことができます。
 審査期間は平均6か月ほど。所定の条件(新規なデザインであるか、容易に創作できるものでないか等)を満たせば意匠登録を受けることができ、最長で25年もの間、登録したデザインを独占的に製造販売等する権利(意匠権)を手にすることができるのです。
 よく似たコピー品に対しては、意匠権にもとづき、販売の差止や損害賠償を求める裁判を提起することができます。こうして商品のデザインを守ることは、ブランドイメージの保護にも繋がるでしょう。
 また意匠登録を受けたという事実は、そのデザインのオリジナリティが公ににも認められたことの証になるため、取引先に商品を売り込む上でも有効な営業ツールとなり得るでしょう。

◆「タッチポイント」は商品のみにあらず
 ところで、顧客との「タッチポイント」は商品だけに限りません。
 商品の包装に用いられるパッケージや、店舗やショールームのような商空間、オンラインストアやアプリのようなウェブコンテンツ等、顧客と触れ合うものすべてが「タッチポイント」となり得ます。
 令和元年の意匠法改正により、空間のデザイン(内装デザイン)や、画像デザインも、一定条件下で意匠登録を受けられるようになりました。意匠登録により保護できるデザインの幅が広がっています。

◆意匠登録についてもっと知りたいときは
 意匠出願にはさまざまな方法があります。デザインの特徴的な部分を登録対象とする「部分意匠」、バリエーションデザインをファミリーのように登録する「関連意匠」等。これらを戦略的に活用することで、より効果的に、強い権利を取得できる可能性があります。
 詳しくは、知的財産の専門家である「弁理士」に相談することができます。また、日本弁理士会や特許庁のホームページでも意匠登録に関する情報を得ることができます。中小企業、スタートアップ支援に役立つ知財情報も充実しており、一見の価値ありです。
 あなたの大切な「娘」を守り、「嫁ぎ先」との関係をさらに良好なものにするために、意匠登録の積極的な活用を検討してはいかがでしょうか。


出典
左:日本弁理士会HP「意匠権リンク」(https://www.jpaa.or.jp/intellectual-property/design-link/
右:特許庁HP「初めてだったらここを読む~意匠出願のいろは~」(https://www.jpo.go.jp/system/basic/design/index.html

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