一般人向け特許調査の勧め(やってみよう、特許調査)/弁理士 玉井 悦
新聞掲載記事- 特許(発明)
「このグッズ、こうしたらもっと便利かも?」そんなひらめきが特許になる可能性があります。特許を取得するには、産業に役立つこと(産業上の利用可能性)、新しいこと(新規性)、簡単には思いつかないこと(進歩性)といった要件が求められます。考えたアイデアで特許が取れるかを確認するために、まずは簡単な特許調査をしてみてはいかがでしょうか。
特許文献には「出願公開公報」と「特許公報」があります。アイデアの特許可能性を調べる場合は、出願された内容が公開されている「出願公開公報」を確認しましょう。「特許公報」は、すでに成立した他人の特許権を侵害していないかを確認する際に利用します。
これらの文献は、「特許情報プラットフォームJ-Platpat」(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/)を使って無料閲覧できます。キーワードや特許分類を使って検索することができますが、その選び方や組み合わせが調査の肝です。
「キーワード」は、対象となる物の名称や特徴から選びます。たとえば、「机の上で転がらないように、丸くなくて角をもたせた形にした鉛筆」を調べたい場合、「鉛筆」「角」「転がる(転がらない)」などが考えられます。ただし、これだけではペンなど他の筆記具が検索対象から外れてしまいます。
そこで役立つのが「特許分類」です。これは特許文献に付けられたコードで、国際基準のIPC、日本独自のFIやFタームがあります。IPCやFIは技術分野ごとに、Fタームは構造・材料・用途など技術の特徴や視点ごとに分類されています。これらの特許分類を使えば、より的確に関連する文献にアプローチすることができます。
特許分類の選定には慣れが必要ですが、まずはキーワードで検索し、出てきた文献から使われている特許分類を確認するのがよい方法です。たとえば、先ほどの転がらない鉛筆の場合、FIのコード、B43K(筆記用または製図用の器具)やその細分類コードを使い、そこに「鉛筆」を除いた「角」「転がらない」といったキーワードを加えて検索すれば、「転がらない角形の筆記具」に関する文献が探せるのではないかと思います。
このように特許調査を行うことで、他の人の技術動向を知り、自身のアイデア開発にも活かせます。特許を考える第一歩として、ぜひ特許調査に挑戦してみてください。より詳しく調べたいときは、専門家である弁理士への相談がおすすめです。