特許料等の減免制度について/弁理士 高橋 俊一
新聞掲載記事- 特許(発明)
特許を取得する際には、特許庁費用や、特許事務所への依頼手数料などの費用が掛かり、その金銭的負担は決して小さくありません。そこで、今回、特許庁費用の削減に役立つ「審査請求料・特許料の減免制度」をご紹介します。
【減免制度の内容】
1.概要
中小企業などの対象者(下記①~⑥を参照)は、特許出願の出願審査請求料、および、第1~10年分の特許料について、減免措置を受けることができます。減免割合は、対象者の種別によって異なります。手続きを行う際に、証明書類の提出は不要です。
2.対象者
以下の①~⑥のいずれかに該当する企業や個人が対象です。
①中小企業
②小規模企業・中小スタートアップ企業
③大学等
④福島特措法認定中小
⑤生活保護受給者・市町村民税非課税者
⑥所得税非課税者・法人税非課税中小企業
3.減免の例
一例として、上記①の中小企業が特許出願をしたケースを紹介します。この場合、減免割合は、2分の1です。なお、請求項数は、1つとしています。
・出願審査請求料:通常142,000円⇒71,000円
・第1から第3年分の特許料:通常11,200円/年⇒5,600円/年
・第4から第6年分の特許料:通常17,400円/年⇒8,700円/年
・第7から第9年分の特許料:通常34,700円/年⇒17,350円/年
4.上限件数について
出願審査請求料の減免については、令和6年4月1日以降、上記①⑥の対象者に対して、一年度あたり180件の上限件数が設けられることになりました。これは、減免制度の濫用を防止するための措置です。
※上記の減免制度の他に、中小企業などを対象者とした、PCT国際出願に係る手数料の減免制度もあります。また、対象者は異なりますが、実用新案や地域団体商標についての減免制度もあります。
【結局、自分は対象?】
ところで、審査請求料・特許料の減免対象となる「中小企業」の定義は、何でしょうか。正解は、(a)業種に応じて定められる「従業員数要件」と「資本金額要件」とのいずれかを満たしており、かつ、(b)大企業に支配されていない、会社です。例えば、製造業の場合、従業員数要件は300人以下、資本金額要件は3億円以下です。サービス業の場合、従業員数要件は100人以下、資本金額要件は5000万円以下です。
それでは、「業種」は、どのように判断すればよいでしょうか。さらに、複数の事業を持つ会社の場合、どの業種について判断すればよいでしょうか。
こうした判断の基準は、特許庁のウェブサイトに掲載されていますが、ご自身での判断が難しい場合もあるかもしれません。「結局、自分は対象?」、「いくら軽減される?」など、減免制度について気になる点がありましたら、ぜひ、お近くの弁理士にご相談ください。