色々あります!中小企業向けの知財の補助金/弁理士 和気 光
新聞掲載記事1.中小企業の知的財産活用支援
中小企業にとって、特許や商標、意匠といった知的財産(知財)は、自社の技術やブランドを守り、他社との差別化を図るうえで非常に重要な資産です。知財を適切に取得・活用することで、模倣や不正使用を防止し、製品やサービスの信頼性を高めることができます。特に大企業との競争や海外展開を検討する際には、知財による保護が不可欠です。一方で、特許出願や商標登録、翻訳、弁理士費用など、知財費用は中小企業にとって大きな負担となる場合があります。そのような負担を軽減するために、国や地方自治体では、知財の取得や活用を支援する補助制度が数多く設けられています。
2.経済産業省のものづくり補助金
代表的な制度の一つが、経済産業省が実施する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」です。この補助金は、中小企業等が新製品や試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものであり、知財費用もその対象に含まれています。
補助額の上限については、知財費用に特別な個別上限が設けられているわけではなく、補助金全体の中で事業に必要な経費として組み込む形となります。例えば、製品・サービス高付加価値化枠で少人数の小規模事業者の場合、補助上限額は750万円程度とされており、この範囲内であれば知財費用も含めて申請が可能です。補助率は、中小企業の場合は1/2、小規模事業者であれば2/3となっています。補助対象費用には、国内・外国への特許・意匠・商標出願に係る代理人費用や、海外出願に必要な翻訳費用等が含まれます。
3.外国出願の補助金
また、東海三県を含め全国的に利用可能な制度として「中小企業等外国出願支援事業(外国出願補助金)」もあります。こちらは、海外での模倣品対策や知財保護のために外国出願を行う中小企業等を対象に、出願関連費用を支援する制度です。補助対象費用は、外国特許庁への出願手数料、国内・現地代理人費用、翻訳費用等であり、当該費用の1/2が補助されます(補助上限額は特許等では150万円、意匠・商標では60万円)。また、海外での模倣品対策として、海外侵害調査、行政摘発の実施等の費用の2/3の補助(補助上限額は400万円)や、海外での自社商標の抜け駆け商標等の対策として、当該商標等を取り消すための費用の2/3の補助(補助上限額は500万円)もあります。問い合わせ窓口は、あいち産業振興機構、岐阜県産業経済振興センター、三重県産業支援センター、又は日本貿易振興機構(ジェトロ)等となります。
4.東海三県の自治体の補助金
さらに、東海三県では自治体毎にも知財取得を支援する補助制度が整備されています。愛知県では、小牧市の「中小企業知的財産権取得事業費補助金」、一宮市の「中小企業特許及び実用新案出願支援補助金」、豊橋市の「知的財産権取得事業費補助金」等があり、瀬戸市、扶桑町、大口町等でも類似の制度が設けられています。岐阜県では、県の「産学官共同研究助成金」や郡上市の「発明申請経費補助金」、大垣市の「知的財産権取得支援事業補助金」等があります。三重県では、県による「試作・開発支援事業補助金」や、伊勢市の「新産業創出支援事業補助金」等があります。
このように、中小企業が知財戦略を進めるにあたり、各種の補助制度を有効に活用することで資金面の負担を軽減でき、より積極的に技術やブランドの保護に取り組むことができます。なお、各補助金制度は、募集時期や要件、対象経費、補助率等が異なりますので、具体的な申請を検討される際には、経済産業省や自治体の公式ウェブサイト等で最新の情報をご確認ください。
知財の海外支援ガイド(出典:特許庁)