女性と弁理士~選べる自由をくれる専門職~/弁理士 谷山 輝恵
新聞掲載記事- 弁理士会
「地方には、女性が一人前の給料をもらえる職場が少ない」。この言葉は、2025年秋にNHKの「どうする地方女性の低賃金」という番組で取り上げられたものです。東京で開かれた地方女性向けワークショップに参加していた20代女性の発言でした。地方では今もなお、性別による役割分担意識が根強く残り、経済的・精神的に自立することが難しい現実があるという声が上がっていました。
私は現在、特許事務所に勤務している中堅弁理士です。2018年、配偶者の転勤に伴い東京から名古屋へ転居した際、転職活動を行いました。40代・小学生の子供ありという条件は、一般的には転職市場で不利とされますが、弁理士という専門職のおかげで、希望条件を満たす職場に2週間ほどで出会うことができました。私の希望条件は、過去の経験を活かせる業務内容で、在宅勤務など柔軟な働き方ができること、そして通勤時間が短く育児との両立がしやすいことでした。
弁理士は、知的財産を守る専門家です。特許や商標などの取得を支援し、技術やブランドを守ることで企業の成長を支えます。専門性を活かせる仕事なので、結婚や育児などライフステージが変わっても働き続けやすいのが特長です。コロナ禍をきっかけにオンラインでの打ち合わせや在宅勤務が進み、近年では中部・東海地方に住みながら、東京や大阪の特許事務所の仕事をしている弁理士も珍しくありません。地方に住み続けながらキャリア形成できることは、女性にとって大きな安心材料だと思います。
私自身、転職経験を通じて、弁理士という職業は、女性に「選べる自由」を与えてくれる専門職であると実感しました。転居という人生の節目があっても、キャリアを諦めることなく、自分らしい働き方を選ぶことができました。もちろん、仕事だけではなく、育児、家事、地域活動などに専念することも尊重されるべきです。何よりも大切なのは、女性自身が自分の人生の選択肢を主体的に選べることだと思います。
今年度、日本弁理士会東海会では、初の女性副会長が就任し、女性弁理士応援委員会が発足しました。弁理士登録者のうち女性の割合は増加していますが、約17.5%とまだ少数派です。同委員会では、女性弁理士の交流の場を設けるなど、女性弁理士が孤立せずに力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。私も同委員会の一員として、女性の「選べる自由」と「専門性」を支える一翼となれるように尽力したいと思います。
