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「鬼滅」に学ぶ商標戦略 /弁理士 永原 彩子

新聞掲載記事
  • 商標(ブランド)

 社会現象となったアニメ『鬼滅の刃』。その人気の裏側で、原作を持つ集英社は、「鬼滅の刃」や「炭治郎」「柱」などの名前を次々と商標登録しています。その範囲は、お菓子から服、文具等多数の区分に及び、関連商品の無断使用を防いでいます。なかでも注目すべきは、その商標戦略の早さと範囲の広さです。登場人物の名前はもちろんのこと、柱たちの羽織柄まで登録済みであり、人気が爆発する前から出願が進められ、ブランドを守るために着々と知的財産を固めていたことがわかります。

 しかしこれは、大企業に限った話ではありません。仮に、自社製品と似た名前を他社に登録された場合、長年使ってきた名前であっても変更を余儀なくされる場合があります。小さな店や会社ほどダメージは大きく、中小企業こそ、自社の製品名やサービス名を商標として保護すべきだといえます。

 知的財産は目には見えない資産ですが、企業価値を守る戦略的投資となります。正しく守れば競争力を高める武器にもなります。特に商標権については、一度登録が認められると半永久的に所有が可能となります。自社の看板商品やサービスについて、知的財産の保護が十分に及んでいるか、一度確認してみてはいかがでしょう。

 特許出願にあたって、発明者と企業知財部員と弁理士とで面談が行われる場合があります。面談で弁理士がする質問には、大まかには、発明の内容を弁理士が理解するための質問と、請求項を検討するための質問とがあります。

  私は、新卒で入社した会社で、発明者として参加する面談がとても苦手でした。口頭での説明が元々苦手という理由の他に、自分よりも製品の技術に詳しい弁理士先生からの質問に対して回答できなかったら、技術者として恥ずかしいという思いがあったからです。また、思いがけない質問に詰まってしまうこともありました。思いがけない質問とは、入社時には既に固まっていたデバイス構造の別形態を問うような質問です。

  さて、面談で質問する側に立場が変わり、説明が上手な発明者が多いと感心しています。時に舌足らずな私の質問にも意をくんで回答して下さり、大変助かっています。発明者のときには、何やら試されているような気がしていた面談ですが、質問する側になると、今度は発明の本質を探るために懸命です。反省しつつ、充実した面談ができるように継続して取り組んでいます。初めて面談に臨まれる発明者の方も、どうぞ気負わずにご参加下さい。

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