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町で見かけた知的財産/弁理士 長谷 真司

新聞掲載記事
  • 特許(発明)

 日々、調理を行って作り置きするときに、料理を入れておく容器として、とても重宝しているものなんですが、百円均一ショップで売られている「楽ちんパック」という、商品。百均で売っているにもかかわらず、百円よりも高い値段で売られていますが、この商品がとても便利で、かなりたくさん、購入して使用しております。

 何が便利かというと、蓋の周縁が上に盛り上がってフランジのようになっていて、また、容器本体の開口周縁にもフランジが設けられていて、蓋を閉めるとき、蓋が容器の中に嵌まっていくような感じになり、何となく閉めやすく感じること。また、閉めると、フランジ同士があたって、漏れにくいということ。こういったことが、個人的な感覚として便利であると、感じております。

 店頭では、ラベルに特許番号が載っていたので、実際の明細書でどんなことが特許として書かれているのか確認してみたくなり、検索して見てみることにしました。すると、自分の感じたこととは全く違う点が特許として記載されており、自分の感覚とのギャップに大いに驚いたのです。請求項に載っていた構成は、容器本体の内壁にぐるりとリブを設けること、また、容器本体にはまり込む蓋の外壁にもぐるりとリブを設けること、そして、容器本体の内壁の一部を外側に凹ませて外気に通じるようにすること、などでした。

 そこで、現物を実際に確認してみると確かにリブや凹みがあり、長年使用しているにもかかわらず全く気付かなかった構成であることがわかりました。

また、明細書で主張されている効果は、電子レンジなどで長時間加熱して容器の内圧が上がって蓋が上昇すると、リブ同士が引っかかって蓋が飛び出るのを規制できること。また、蓋が上昇して凹みの位置に到達すると、容器内から気体が外気に漏れ出して内圧が下がること。等々が書かれていました。

 つまり、この特許の主題は、過剰な加熱を行っても、蓋が飛び出すような状況を避けることができる、また、内容物が飛び散ったりするのを防ぐことができる、というものでして、私が感じていたような利便性を越えて、もっとレベルの高い次元で考えられたものでした。

 この経験で感じたことは、特許権は、気づかれることなく、また、人知れずユーザの役にたっているという感覚であり、このように人知れずユーザの役に立つ特許権の取得を目指していこうと、改めて考えた次第です。


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