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税関の業務内容 前編/広報企画委員会 弁理士 清水 聡

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 今月と、来月の2回にわたり、名古屋税関の職員の方への取材記事を掲載します。税関は、空港や港で、輸出入される貨物や旅客の手荷物を検査し、関税の徴収、密輸取締りなどを管理する国の行政機関です。今回は、「知的財産権(特許権、意匠権、商標権、著作権など)」を侵害する物品への対策について、三名の名古屋税関の担当者にお話を伺いました。


Q 輸出と輸入では、どちらの取締りが多いですか

「日本は知的財産侵害物品の消費国と考えています。したがって、輸出よりも輸入がメインという認識です。輸出の差止申立受理件数は、現在全国で約10件、同じく輸入の差止申立受理件数は全国で800件以上です。差止件数は、最近は右肩上がりで増加しています。」

Q 侵害品の仕出国はどこが多いですか。

「件数ベースで、中国が最も多いです。最近は、ベトナムも増えています。」

Q 取締りは、具体的にどんな感じで行っていますか。

「どのような貨物を検査対象にするかは、取締りの関係上明らかにできないのですが、不審があれば貨物を開けて中を確認し、知的財産を侵害する可能性があると思えば、税関は貨物を差止めるための手続(認定手続)を執ります。」

Q そこで不審だなって、思ったりするのは経験とかそういうものですか?

「権利者からの差止申立てが提出されていれば、税関職員はその情報に基づき検査を行います。差止申立てが提出されていなくても、侵害品の疑いを持ったときには、職権による認定手続を行います。」

Q では、差止申立ての手続きについてお伺いします。自分の知的財産権を侵害していると思われる商品を発見したら、どうしたらいいですか。

「まず、東京税関の知的財産センター又は最寄りの税関にある知的財産担当窓口に電話(名古屋税関の場合は052-654-4116)してください。」

Q 相談は有料ですか。回数制限はありますか。

「無料です。回数制限はありません。」

Q どの程度の証拠があったら相談できますか。裁判所や特許庁などのお役所のお墨付きが必要ですか。

「いいえ。例えば、商品が流通しているのを発見した、ネット上で商品が販売されているのを発見した、海外でうちの模倣品が出回っているのを確認した、などの情報で相談を受けます。模倣品を入手されていれば、初期相談(面談)時に持参いただければと思います。」

Q 相談したら、すぐに差止めできるのですか。

「いいえ、差止申立書及び添付書類を作成、提出していただく必要があります。」

Q 差止申立てのための書類は、相談したらすぐに作成できますか。

「通常、何回か相談が必要になります。初期相談は直接お会いして面談を行いますが、その後のやり取りは主にメールを利用して行い、差止申立書及び添付書類の準備に概ね2~3か月かかります。何か月もかけて丁寧に作成する場合もあります。」

Q 書類を早く作成するにはどうしたらいいですか。

「重要なのは、侵害の事実を疎明するための書類と、識別ポイントに関する書類です。

侵害の事実を疎明するところは専門家(弁理士など)に作成を依頼される権利者も少なくありません。

 識別ポイントは、侵害品を識別するためのポイントとなる部分です。ご自分の商品と侵害品とを明確に区別できるポイントを挙げて下さい。現場では、税関職員が貨物を見て判断するので、識別ポイントを明確にすることで、判断しやすくなります。」

Q 税関とのやりとりは、具体的にはどんな感じですか。

「お電話いただいた後、一度相談に来ていただいて、最初はドラフトという形で書類を作成、提示いただきます。内容を拝見し、不備や確認を要する箇所等についてコメントを付してお返しして、書類を修正、提示いただき(内容によっては、このやり取りが複数回になる場合があります)、内容が整ったところで、正式に差止申立書及び添付書類を提出していただきます。」

Q 書類を作成して提出したら、すぐに取り締まってもらえるのですか。

「いいえ。書類を提出いただいた後、税関のホームページで受理前公表をします。輸入者などの利害関係者に意見を求めるためです。このときに、利害関係者から意見が出ると、専門委員意見照会といって、専門家に侵害の事実が疎明されているか否か意見を求める機会があります。利害関係者からの意見がなく、侵害の疎明がなされていると判断できる場合、専門委員意見照会は行われません。」

Q 受理前公表の期間は何日ですか。

「祝日などを含まない10日間です。公表期間内に何も意見などが出なければ、審査をして受理又は不受理の決定がなされます。」

Q 書類を正式に提出してからの期間はどれくらいかかりますか。

「専門委員意見照会を行わない場合であれば、概ね1か月くらいで審査の結果が出ます。」

Q やっと差止申立てが受理されるのですね。ここまでで、かなりのやり取りが必要かと思いますが、やはり無料ですか。

「税関とのやり取りは無料です。ただし、権利者が侵害の事実を疎明するための書類の作成や、専門委員意見照会に提出する意見の作成を、弁理士などの専門家に依頼する際の費用は自己負担となります。」

Q それらは、権利者が自分で作成してもいいのですか。

「はい、自社内で作成される方もいます。ただ、慣れていない方だと、時間がかかる場合があります。」

Q なるほど、専門家を上手く使えば時間を節約できるのですね。

「そうですね。」

Q 差止申立てが税関に受理された後は、どうなりますか。

「全国の税関(函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄)で取締りが開始されます。権利者が希望すれば、取締り対象の税関を限定することも可能です。一般的には、すべての税関(全国)で取締りを行ってください、というケースが多いです。」

Q 権利者が名古屋に在住している場合でも、侵害品は全国の至る所から入ってきますよね。取締りの単位を全国にしても、名古屋だけにしても、無料ですか。

「どちらでも、無料です。」

Q 取締りというのは、24時間体制ですか。

「取締りは24時間、365日体制でやっています。ただ、輸入申告できる時間帯は、税関の官署によって異なります。」

Q 一度受理されると、半永続的に取り締まってもらえますか。

「権利が有効であり、差止申立てが受理されていれば、税関は取締りを継続します。差止申立ての有効期間は最長で4年ですので、取締りの継続を希望される場合は、期間終了前に更新していただく必要があります。」

Q 権利が有効であれば、更新することにより、ずっと取り締まってもらえるということですね。


 今回の記事は、差止申立てが税関に受理されるまでとします。差止申立てが受理された後の手続きについては、次回の記事でご紹介します。


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